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社会保険労務士合格研究室

労働基準法「賃金支払い5原則」

R7-147 01.21

賃金の通貨払いの原則と例外

 賃金は、「労働の対償」として支払われるものです。

 労働者が、労働した分の賃金を、間違いなく受け取ることができるよう、労働基準法では、賃金の支払いについて5つの原則を定めています。

 

賃金支払い5原則は次のとおりです。

① 通貨払い

② 直接払い

③ 全額払い

④ 毎月1回以上払い

⑤ 一定期日払い

 

 

条文を読んでみましょう。

24条 (賃金の支払)

① 賃金は、通貨で直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

② 賃金は、毎月1回以上一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金については、この限りでない。

 

今回は、「通貨払いの原則とその例外」をみていきます。

原則 → 賃金は通貨(例えば、1万円札や100円硬貨など)で支払わなければなりません。

例外 → 通貨以外で支払うことができる場合もあります。

・ 法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合

・ 厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合

 

過去問をどうぞ!

①【R1年出題】

 労働基準法第24条第1項は、賃金は、「法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、通貨以外のもので支払うことができる。」と定めている。

 

 

 

 

 

【解答】

①【R1年出題】 ×

 賃金を「通貨以外のもの」で支払うことができるのは、「法令に別段の定めがある場合又は「労使協定」がある場合」ではなく、「法令若しくは労働協約別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合」です。

「労働協約」と「労使協定」の違いに注意しましょう。

★「労働協約」とは

 労働組合(労働者側)と使用者又はその団体(使用者側)との間の労働条件等に関する約束のことです。労働者側が「労働組合」であることがポイントです。労働組合がない事業場では、労働協約は締結できません。

★「労使協定」とは

・事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合

 労働者の過半数で組織する労働組合がないとき

・労働者の過半数を代表する者

との書面による協定です。労働組合がなくても労使協定は締結できます。

労使協定は、事業場全体に効力が及びます。

 

 

②【H29年出題】

 労働協約の定めによって通貨以外のもので賃金を支払うことが許されるのは、その労働協約の適用を受ける労働者に限られる。

 

 

 

 

 

【解答】

②【H29年出題】 〇

 労働協約は、締結当事者である「使用者」と「労働組合とその構成員」のみに適用されます。

 労働協約の定めによって通貨以外のもので賃金を支払うことが許されるのは、その労働協約の適用を受ける労働者に限られます。労働協約の適用を受けない労働者については、通貨以外のもので支払うことはできません。

(昭63.3.14基発150号)

 

 

 

③【H28年出題】

 使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金の支払について当該労働者が指定する銀行口座への振込みによることができるが、「指定」とは、労働者が賃金の振込み対象として銀行その他の金融機関に対する当該労働者本人名義の預貯金口座を指定するとの意味であって、この指定が行われれば同意が特段の事情のない限り得られているものと解されている。

 

 

 

 

【解答】

③【H28年出題】 〇

 労働者の「同意」を得た場合は、賃金を口座振込みで支払うことができます。

 「同意」については、労働者の意思に基づくものである限り、その形式は問われません。

 労働者が、賃金の振込み対象として労働者本人名義の預貯金口座の指定を行えば、原則として、同意が得られているものと解されます。

(則第7条の2、昭63.1.1基発1号)

 

 

 

④【R3年出題】

 使用者は、退職手当の支払については、現金の保管、持ち運び等に伴う危険を回避するため、労働者の同意を得なくても、当該労働者の預金又は貯金への振込みによることができるほか、銀行その他の金融機関が支払保証をした小切手を当該労働者に交付することによることができる。

 

 

 

 

【解答】

④【R3年出題】 ×

 退職手当の支払についても、労働者の預金又は貯金への振込みで支払う場合は、「労働者の同意」が必要です。

 また、通常の賃金とは違い、退職手当は、小切手を労働者に交付することによって支払うことができますが、この場合も「労働者の同意」が必要です。

(則第7条の2第2項)

 

 

 

⑤【R6年出題】 ※問題文を修正しています

 使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金の支払方法として、労働基準法施行規則第7条の2第1項第3号に掲げる要件を満たすものとして厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者(指定資金移動業者)のうち労働者が指定するものの第二種資金移動業に係る口座への資金移動によることができる(いわゆる賃金のデジタル払い)が、賃金の支払いに係る資金移動を行う口座について、労働者に対して負担する為替取引に関する債務の額が500万円を超えることがないようにするための措置又は当該額が500万円を超えた場合に当該額を速やかに500万円以下とするための措置を講じていることが、労働基準法施行規則第7条の2第1項第3号に定められている。

 

 

 

 

 

【解答】

⑤【R6年出題】 ×

 いわゆる賃金のデジタル払いの要件の一つに「賃金の支払に係る資金移動を行う口座残高上限額を100万円以下に設定又は100万円を超えた場合でも速やかに100万円以下にするための措置を講じていること。」があります。

 問題文は500万円になっているので誤りです。

(則第7条の2第1項第3号)

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