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R7-177 02.21
労災保険法の「遺族補償給付」には、「遺族補償年金」と「遺族補償一時金」があります。
今回は「遺族補償年金」の対象になる遺族についてみていきます。
遺族補償年金には「受給資格者」と「受給権者」があります。
遺族補償年金を受ける資格のある遺族が「受給資格者」です。受給資格者には、順位があり、その中の最先順位の遺族が実際に年金を受給する「受給権者」となります。
受 給 資 格 者 | ① | 受給権者 |
② |
| |
③ |
| |
④ |
| |
⑤ |
|
なお、遺族補償年金には「転給」の制度があります。
①の遺族が失権した場合は、②の遺族に受給権が移ります。
では、条文を読んでみましょう。
第16条の2第1項~第3項 ① 遺族補償年金を受けることができる遺族は、労働者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって、労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していたものとする。ただし、妻(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)以外の者にあっては、労働者の死亡の当時次の各号に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。 (1) 夫(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)、父母又は祖父母については、60歳以上であること。 (2) 子又は孫については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあること。 (3) 兄弟姉妹については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあること又は60歳以上であること。 (4) 前3号の要件(年齢要件)に該当しない夫、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹については、厚生労働省令で定める障害の状態にあること。 ② 労働者の死亡の当時胎児であった子が出生したときは、将来に向かって、その子は、労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子とみなす。
③ 遺族補償年金を受けるべき遺族の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹の順序とする。 |
ポイント!
・労働者の死亡当時、労働者の収入によって生計を維持していたものが対象です。
・妻以外は、労働者の死亡当時、「年齢要件」か「障害要件」のどちらかを満たしていることが必要です。
★昭40法附則第43条について
・夫、父母、祖父母及び兄弟姉妹で、労働者の死亡の当時、その収入によって生計を維持し、かつ、55歳以上60歳未満であったものも遺族補償年金を受けることができる遺族とされます。
・ただし、その者が60歳に達する月までの間は、遺族補償年金は支給停止されます。(若年停止)といいます。
★受給資格者の順位は次のようになります。
① | 「妻」又は「60歳以上又は障害状態の夫」 |
② | 18歳の年度末までの間にある又は障害状態の子 |
③ | 60歳以上又は障害状態の父母 |
④ | 18歳の年度末までの間にある又は障害状態の孫 |
⑤ | 60歳以上又は障害状態の祖父母 |
⑥ | 18歳の年度末までの間にある又は60歳以上又は障害状態の兄弟姉妹 |
⑦ | 55歳以上60歳未満の夫 |
⑧ | 55歳以上60歳未満の父母 |
⑨ | 55歳以上60歳未満の祖父母 |
⑩ | 55歳以上60歳未満の兄弟姉妹 |
では、過去問をどうぞ!
①【H28年出題】
傷病補償年金の受給者が当該傷病が原因で死亡した場合には、その死亡の当時その収入によって生計を維持していた妻は、遺族補償年金を受けることができる。
【解答】
①【H28年出題】 〇
遺族補償年金は、業務上の即死又は業務上の負傷若しくは疾病に起因する死亡の場合に支給されます。
傷病補償年金の受給者がその傷病が原因で死亡した場合は、業務上の死亡となり、遺族補償年金が支給されます。
②【H28年出題】
労働者が業務災害により死亡した場合、当該労働者と同程度の収入があり、生活費を分担して通常の生活を維持していた妻は、一般に「労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた」ものにあたらないので、遺族補償年金を受けることはできない。
【解答】
②【H28年出題】 ×
「生計を維持していた」とは、「専ら、又は主として労働者の収入によって生計を維持していることを要せず、相互に収入の全部又は一部をもって生計費の全部又は一部を共同計算している状態があれば足りる。共稼ぎの夫婦も配偶者の他方の収入の一部によって生計を維持していたことになる」とされています。
問題文の「労働者と同程度の収入があり、生活費を分担して通常の生活を維持していた妻」は、「生計を維持していた」に当たりますので、遺族補償年金を受けることができます。
(昭41.1.31基発73号)
③【H19年出題】
遺族補償年金又は遺族年金の受給資格要件の一つである厚生労働省令で定める障害の状態は、身体に障害等級第5級以上に該当する障害がある状態又は傷病が治らないで、身体の機能若しくは精神に、労働が高度の制限を受けるか、若しくは労働に高度の制限を加えることを必要とする程度以上の障害がある状態である。
【解答】
③【H19年出題】〇
遺族の要件の一つである「厚生労働省令で定める障害の状態」のキーワードは、「第5級以上」、「労働が高度の制限を受ける」の部分です。
なお、この規定は、複数事業労働者遺族年金にも準用されます。
(則第15条)
④【R5年出題】
妻である労働者の死亡当時、無職であった障害の状態にない50歳の夫は、労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していたものであるから、遺族補償年金の受給資格者である。
【解答】
④【R5年出題】 ×
夫については、労働者の死亡当時、年齢要件か障害要件を満たす必要があります。
「障害の状態にない50歳の夫」は、両方とも満たしていませんので、遺族補償年金は受けられません。
⑤【R2年出題】
業務上の災害により死亡した労働者Yには2人の子がいる。1人はYの死亡の当時19歳であり、Yと同居し、Yの収入によって生計を維持していた大学生で、もう1人は、Yの死亡の当時17歳であり、Yと離婚した元妻と同居し、Yが死亡するまで、Yから定期的に養育費を送金されていた高校生であった。2人の子は、遺族補償年金の受給資格者であり、同順位の受給権者となる。
【解答】
⑤【R2年出題】 ×
「子」については、労働者の死亡当時、「年齢要件」か「障害要件」のどちらかを満たす必要があります。
・19歳の大学生について
→「年齢要件」を満たしていませんので、受給資格者になりません。なお、「障害要件」を満たしていれば受給資格者となります。
・17歳の高校生について
→「年齢要件」を満たしていて、かつ、「定期的に養育費を送金されていた=生計を維持されていた」ので、受給資格者となります。
⑥【R5年出題】
労働者の死亡当時、胎児であった子は、労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していたものとはいえないため、出生後も遺族補償年金の受給資格者ではない。
【解答】
⑥【R5年出題】 ×
「労働者の死亡の当時胎児であった子が出生したときは、将来に向かって、その子は、労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子とみなす」とされています。生まれたときから、受給資格者となります。
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