R3-262
今日は、「現物給付」と「現金給付」です。
健康保険法の保険給付の代表「療養の給付」。例えば、病気で病院に行き、診察を受ける、注射を打ってもらう、入院する、手術を受ける等々は「現物給付」です。現金が支給されるわけではありません。
一方、「療養費」は現金給付です。近くに保険医療機関がないなどの理由で、保険医療機関等以外で治療などを受けた場合は、現物給付ではなく、費用が支払われます。
「現物給付」と「現金給付」についての問題をみていきましょう。
こちらからどうぞ!
①<H29年出題>
被保険者(特定長期入院被保険者を除く。以下本肢において同じ。)が保険医療機関である病院又は診療所から食事療養を受けたときは、保険者は、その被保険者が当該病院又は診療所に支払うべき食事療養に要した費用について、入院時食療養費として被保険者に対し支給すべき額の限度において、被保険者に代わり当該病院又は診療所に支払うことができ、この支払があったときは、被保険者に対し入院時食事療養費の支給があったものとみなされる。
②<H24年出題>(修正)
被保険者が、厚生労働省令で定めるところにより、保険医用機関等から評価療養、患者申出療養又は選定療養を受けたときは、その療養に要した費用について、保険外併用療養費が支給される。この場合、被保険者に支給すべき保険外併用療養費は、その病院若しくは診療所又は薬局に対して支払うものとする。
③<R1年出題>
被保険者が指定訪問看護事業者から指定訪問看護を受けたときは、保険者は、その被保険者が当該指定訪問看護事業者に支払うべき当該指定訪問看護に要した費用について、訪問看護療養費として被保険者に支給すべき額の限度において、被保険者に代わり、当該指定訪問看護事業者に支払うことができる。この支払いがあったときは、被保険者に対し訪問看護療養費の支給があったものとみなす。
【解答】
①<H29年出題> 〇
入院時食事療養費は第85条で第1項で、「療養の給付と併せて受けた食事療養に要した費用について、入院時食事療養費を支給する。」と定められていますが、実際は現物給付となっています。
同条第5項で、「保険者は、その被保険者が当該病院又は診療所に支払うべき食事療養に要した費用について、入院時食事療養費として被保険者に対し支給すべき額の限度において、被保険者に代わり、当該病院又は診療所に支払うことができる。」とされているからです。
第5項を解体して流れを書きますと、被保険者が療養の給付と併せて食事療養を受けた場合、
・ 本来は被保険者が病院又は診療所に食事療養に要した費用を支払う
↓
・ 保険者から被保険者に対して食事療養の費用を入院時食事療養費として支給する
ここまでだと現金給付になるのですが、
↓
・ 保険者は、「入院時食事療養費として被保険者に対し支給すべき額の限度で、被保険者に代わり、当該病院又は診療所に支払うことができる」、とされていて、保険者から病院等に食事に要した費用を直接支払うことによって、結果として現物給付になるという仕組みです。
(法第85条)
②<H24年出題>(修正) 〇
保険外併用療養費も「現物給付」で行われます。
先ほどの入院時食事療養費と同じです。
第86条第1項では、「その療養に要した費用について、保険外併用療養費を支給する。」となっているのですが、実際は、保険者から保険医療機関等に、直接費用を払うことができるので、結果として現物給付となっています。
(法第86条)
③<R1年出題> 〇
訪問看護療養費も、第88条第1項で、「被保険者が指定訪問看護を受けたときは、その指定訪問看護に要した費用について、訪問看護療養費を支給する。」と規定されています。
しかし、同条第6項で保険者が被保険者に代わり、当該指定訪問看護事業者に支払うことができる、とされていて、保険者が被保険者に代わって、指定訪問看護事業者に直接費用を支払うことによって、結果として現物給付になっています。
(法第88条)
では、現金給付の問題もどうぞ!
④<H24年出題>
被保険者が療養の給付(保険外併用療養費に係る療養を含む。)を受けるため、病院又は診療所に移送されたときは、保険者が必要であると認める場合に限り、移送費が支給される。この金額は、最も経済的な通常の経路及び方法により移送された場合の費用により算定した金額となるが、現に移送に要した費用の金額を超えることができない。
【解答】
④<H24年出題> 〇
移送費は「現金給付」です。
移送費の額は、最も経済的な通常の経路及び方法により移送された場合の費用の範囲内で算定されます。(ただし、実費を超えることはできません。)
(法第97条)
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