R4-134
労働者災害補償保険法・・・昭和22年施行
労働基準法と時を同じくして公布・施行されました。
労働基準法の第8章は「災害補償」です。
労働者の業務上の負傷等について、使用者に対して、療養補償、休業補償、障害補償、遺族補償、葬祭料を行うことが定められていて、また打切補償についても規定されています。
ただ、実際に、大きな業務災害が起こった時などに、使用者が災害補償を完全に履行できるかが問題です。
その問題を解決するのが労災保険です。
「保険」の仕組みをとり、すべての事業主が保険料を負担し、いざ、災害が発生したときは迅速に労働者に対して補償が行われる制度です。
使用者の「災害補償」の責任を代行するのが労災保険です。
労災保険は、保険料は全額事業主負担、保険給付の対象は全ての労働者であることがポイントです。被保険者という概念もありません。
他の公的保険、例えば健康保険には「被保険者」の範囲が位置付けられていて、被保険者は事業主と折半で保険料を負担し、負傷等の場合は被保険者に対して保険給付が行われます。
さて、労災保険は当初は「業務災害」だけが保護の対象でしたが、交通事情等の変化に伴い通勤途上の災害も保護する必要がでてきました。
「通勤災害」が労災保険の保護の対象に加わったのは、昭和48年の改正です。
そして、過労死等の原因になる脳血管疾患及び心臓疾患の発症を予防するための「二次健康診断等給付」が加わったのは、平成13年4月です。
さらに、令和2年9月からは、「複数事業労働者」への保険給付(複数業務要因災害に関する保険給付)も加わりました。
★では、目的条文を読んでみましょう。空欄を埋めて下さい。
第1条
労働者災害補償保険は、業務上の事由、事業主が同一人でない2以上の事業に使用される労働者(以下「複数事業労働者」という。)の2以上の事業の業務を要因とする事由又は< A >による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由又は< A >により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もって労働者の< B >に寄与することを目的とする。
解答は、A 「通勤」、B 「福祉の増進」です。
なお、労働者の負傷、疾病、障害、死亡等の「等」は、二次健康診断等給付をさしています。
★では、次は第2条の2です。
労働者災害補償保険は、第1条の目的を達成するため、業務上の事由、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に関して保険給付を行うほか、社会復帰促進等事業を行うことができる。 |
労災保険法のメインの目的は「保険給付」を行うことです。
そして保険給付に付帯する事業が「社会復帰促進等事業」です。
■保険給付は、次の4つです。
① 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付
② 複数事業労働者(これに類する者として厚生労働省令で定めるものを含む。)の2以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、障害又は死亡(以下「複数業務要因災害」という。)に関する保険給付(①に掲げるものを除く。)
③ 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という)に関する保険給付
④ 二次健康診断等給付
■「社会復帰促進等事業」は次の3つです。
① 被災労働者の円滑な社会復帰を促進するために必要な事業 (社会復帰促進事業)
② 被災労働者及びその遺族の援護を図るために必要な事業 (被災労働者等援護事業)
③ 労働者の安全及び衛生の確保、保険給付の適切な実施の確保並びに賃金の支払の確保を図るために必要な事業 (安全衛生確保等事業)
例えば、業務上の負傷が治癒し、障害等級第1級の障害が残った場合は、保険給付として、「障害補償年金」が支給されます。
それに上乗せして、社会復帰促進等事業の「被災労働者等援護事業」から「特別支給金」として、障害特別支給金と障害特別年金が支給されます。
(例)障害等級1級の場合
(社会復帰促進等事業) 特別支給金 | 障害特別年金 (算定基礎日額×313日分)/年 |
障害特別支給金 342万円(一時金) | |
(保険給付) | 障害補償年金 (給付基礎日額×313日分)/年 |
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