R6-052
今日は、労災保険法です。
「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」の基本的な考え方を確認しましょう。
・業務による明らかな過重負荷が加わることによって、血管病変等がその自然経過を超えて著しく増悪し、脳・心臓疾患が発症する場合があります。そのような経過をたどり発症した脳・心臓疾患は、その発症に当たって業務が相対的に有力な原因であると判断し、業務に起因する疾病として取り扱われます。
・脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす業務による明らかな過重負荷として、発症に近接した時期における負荷及び長期間にわたる疲労の蓄積が考慮されます。
・業務による過重負荷の判断に当たっては、労働時間の長さ等で表される業務量や、業務内容、作業環境等を具体的かつ客観的に把握し、総合的に判断する必要があります。
次に、「認定要件」を確認しましょう。
次の(1)、(2)又は(3)の業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症した脳・心臓疾患は、業務に起因する疾病として取り扱われます。
(1) 発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務(「長期間の過重業務」という。)に就労したこと。
(2) 発症に近接した時期において、特に過重な業務(「短期間の過重業務」という。)に就労したこと。
(3) 発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事(「異常な出来事」という。)に遭遇したこと。
※(1)「発症前の長期間」とは、発症前おおむね6か月間をいいます
(2)「発症に近接した時期」とは、発症前おおむね1週間をいいます。
(参照:令和3年9月1 4日付 基発 0 9 1 4 第 1 号)
では、過去問をどうぞ!
①【R4年出題】
短期間の過重業務については、発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる場合や、発症前おおむね1週間継続して深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働が認められる場合に、業務と発症との関連性が強いと評価できるとされている。
②【R4年出題】
心理的負荷を伴う業務については、精神障害の業務起因性の判断に際して、負荷の程度を評価する視点により検討、評価がなされるが、脳・心臓疾患の業務起因性の判断に際しては、同視点による検討、評価の対象外とされている。
③【R4年出題】
急激な血圧変動や血管収縮等を引き起こすことが医学的にみて妥当と認められる「異常な出来事」と発症との関連性については、発症直前から1週間前までの間が評価期間とされている。
【解答】
①【R4年出題】 〇
「短期間の過重業務と発症との関連性」を時間的にみた場合、業務による過重な負荷は、発症に近ければ近いほど影響が強いと考えられます。次に示す業務と発症との時間的関連を考慮して、特に過重な業務と認められるか否かを判断することとされています。
① 発症に最も密接な関連性を有する業務は、発症直前から前日までの間の業務であるので、まず、この間の業務が特に過重であるか否かを判断すること。
② 発症直前から前日までの間の業務が特に過重であると認められない場合であっても、発症前おおむね1週間以内に過重な業務が継続している場合には、業務と発症との関連性があると考えられるので、この間の業務が特に過重であるか否かを判断すること。
(令和3年9月1 4日付 基発 0 9 1 4 第 1 号)
②【R4年出題】 ×
心理的負荷を伴う業務については、別表1及び別表2に掲げられている日常的に心理的負荷を伴う業務又は心理的負荷を伴う具体的出来事等について、負荷の程度を評価する視点により検討し、評価することとされています。
心理的負荷を伴う業務については、脳・心臓疾患の業務起因性の判断に際しても、負荷の程度を評価する視点による検討、評価の対象になります。
(令和3年9月1 4日付 基発 0 9 1 4 第 1 号)
③【R4年出題】 ×
異常な出来事と発症との関連性については、通常、負荷を受けてから24時間以内に症状が出現するとされていますので、評価期間は、「発症直前から前日までの間」とされています。
(令和3年9月1 4日付 基発 0 9 1 4 第 1 号)
では、令和5年の問題をどうぞ!
【R5年出題】
「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」(令和3年9月14日付け基発0914 第1 号)で取り扱われる対象疾病に含まれるものは、次のアからオの記述のうちいくつあるか。
ア 狭心症
イ 心停止(心臓性突然死を含む。)
ウ 重篤な心不全
エ くも膜下出血
オ 大動脈解離
【解答】
【R5年出題】 5つ
なお、認定基準で対象疾病として取り扱われる脳・心臓疾患は以下の通りです。
< 脳血管疾患>
(1) 脳内出血(脳出血)
(2) くも膜下出血
(3) 脳梗塞
(4) 高血圧性脳症
< 虚血性心疾患等>
(1) 心筋梗塞
(2) 狭心症
(3) 心停止(心臓性突然死を含む。)
(4) 重篤な心不全
(5) 大動脈解離
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