R6-166
過去問から学びましょう。
今日は労働基準法です。
1か月単位の変形労働時間制について条文を読んでみましょう。
第32条の2 ① 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、1か月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が法定労働時間(原則40時間・特例44時間)を超えない定めをしたときは、その定めにより、特定された週において40時間(特例44時間)又は特定された日において8時間を超えて、労働させることができる。 ② 使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、労使協定を行政官庁に届け出なければならない。 |
★ 1か月単位の変形労働時間制は、「1か月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が法定労働時間(原則40時間・特例44時間)を超えない」ことが条件です。
変形期間の所定労働時間の総枠は、次のように計算します。この範囲内なら平均すると1週間当たりの労働時間は、法定労働時間以内になります。
1週間の法定労働時間 (40時間・特例44時間) |
× | 変形期間の暦日数 |
7 |
例えば、法定労働時間が40時間の事業場で、変形期間を1か月とし暦日数が31日の場合の総枠は、40時間×31日/7=177.1時間となります。
1か月の総労働時間が177.1時間以内なら、特定された週に40時間又は特定された日に8時間を超えて労働させることができます。
過去問をどうぞ!
①【R1年出題】
1か月単位の変形労働時間制は、就業規則その他これに準ずるものによる定めだけでは足りず、例えば当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合と書面により協定し、かつ、当該協定を所轄労働基準監督署長に届け出ることによって、採用することができる。
②【R1年出題】
1か月単位の変形労働時間制により労働者に労働させる場合にはその期間の起算日を定める必要があるが、その期間を1か月とする場合は、毎月1日から月末までの暦月による。
③【R1年出題】
1か月単位の変形労働時間制においては、1日の労働時間の限度は16時間、1週間の労働時間の限度は60時間の範囲内で各労働日の労働時間を定めなければならない。
④【R1年出題】
1か月単位の変形労働時間制により所定労働時間が、1日6時間とされていた日の労働時間を当日の業務の都合により8時間まで延長したが、その同一週内の1日10時間とされていた日の労働を8時間に短縮した。この場合、1日6時間とされていた日に延長した2時間の労働は時間外労働にはならない。
⑤【R1年出題】
1か月単位の変形労働時間制は、満18歳に満たない者及びその適用除外を請求した育児を行う者については適用しない。
【解答】
①【R1年出題】 ×
1か月単位の変形労働時間制は、「就業規則その他これに準ずるものによる定め」又は「労使協定」のどちらかで採用できます。
ちなみに、10人以上の事業場は、就業規則の作成義務がありますので、「就業規則に準ずるもの」では採用できません。10人以上の事業場は、「就業規則」又は「労使協定」のどちらかになります。
「その他これに準ずるもの」は10人未満の事業場のみに適用されます。
また、10人以上でも10人未満でも、1か月単位の変形労働時間制を「労使協定」で採用する場合は、協定を所轄労働基準監督署長に届け出る義務があります。届出義務はありますが、届出をしなくても効力は発生します。そのため、「当該協定を所轄労働基準監督署長に届け出ることによって、採用することができる。」は誤りです。
(法第32条の2)
②【R1年出題】 ×
1か月単位の変形労働時間制を採用する場合には、その期間の起算日を定める必要があります。
変形期間を1か月とする場合、毎月1日から月末までの暦月という要件はありません。
ちなみに、変形期間は1か月以内なら、例えば、2週間、4週間なども可能です。
(則第12条の2)
③【R1年出題】 ×
1か月単位の変形労働時間制を採用する場合は、変形期間の所定労働時間の合計が40(又は44)×変形期間の暦日数/7の範囲内となることが条件です。
1か月単位の変形労働時間制においては、1日の労働時間の限度や1週間の労働時間の限度は定められていません。
(S63.1.1基発第1号)
④【R1年出題】 〇
★1か月単位の変形労働時間制を採用した場合に時間外労働となるのは、次の時間です。
①1日について
→ 就業規則その他これに準ずるものにより8時間を超える時間を定めた日はその時間を、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間
②1週間について
→ 就業規則その他これに準ずるものにより40時間(特例44時間)を超える時間を定めた週はその時間を、それ以外の週は40時間(特例44時間)を超えて労働した時間(①で時間外労働となる時間を除く。)
③ 変形期間について
→ 変形期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間(①又は②で時間外労働となる時間を除く。)
問題文の場合、「1日6時間」の日ですので、①の「それ以外の日」に当たり、時間外労働となるのは、「8時間を超えて労働した時間」です。その日の労働時間は8時間ですので、延長した2時間は時間外労働にはなりません。
(S63.1.1基発第1号)
⑤【R1年出題】 ×
1か月単位の変形労働時間制は、満18歳に満たない者には適用されません。
(第60条)
「育児を行う者」については「適用しない」ではなく、「配慮をしなければならない」となっています。
条文を読んでみましょう。
則第12条の6 使用者は、1か月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制又は1週間単位の非定型的変形労働時間制により労働者に労働させる場合には、育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練又は教育を受ける者その他特別の配慮を要する者については、これらの者が育児等に必要な時間を確保できるような配慮をしなければならない。 |
社労士受験のあれこれ
毎日コツコツYouTubeチャンネル
チャンネル登録よろしくお願いします