労災保険法第42条では、時効について次のように規定しています。
療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付、療養給付、休業給付、葬祭給付、介護給付及び二次健康診断等給付を受ける権利は、2年を経過したとき、障害補償給付、遺族補償給付、障害給付及び遺族給付を受ける権利は、5年を経過したときは、時効によつて消滅する。
労災保険法の保険給付は、原則として、労働者(又は遺族、葬祭を行う者)が、請求することによって行われます。
第42条の時効で消滅するのは、「保険給付を支給決定を受ける権利」(基本権)です。(実体としては請求書の提出期限)
「傷病(補償)年金」は請求ではなく、「職権」で支給決定されるので、42条の時効の問題は生じない、ということでしたよね。
では、政府に保険給付を請求し、政府が支給決定した後はどうなるのでしょう?
支給が決定された保険給付の支払請求権(年金の場合は、支払期月ごとに生ずる支分権)については、労災保険法ではなく「会計法」の規定により5年で時効消滅します。
それでは、次の問題を解いてみましょう。
【H11年出題】
請求をして支給決定が行われた保険給付の支払を受ける権利(年金の場合は、各支払期月ごとに生ずる支払請求権)については、労働者災害補償保険法の規定によらず、公法上の金銭債権として会計法第30条の規定が適用されるので、その消滅時効は5年となる。
【H15年出題】
傷病補償年金又は傷病年金は、政府の職権によって支給が決定されるものであるから、これを受ける権利に関して労災保険法では時効について定めていないが、支給が決定された年金の支払期ごとに生ずる請求権については、会計法上の時効の規定が適用される。
<解答>
【H11年出題】 → ○
【H15年出題】 → ○
* 傷病(補償)年金について
基本権 → 時効の定め無し
支分権 → 会計法の規定が適用され5年で時効消滅