まず、労災保険、国民年金、厚生年金保険の目的を確認してみるとこんな感じになります。
労災保険 | 国民年金 | 厚生年金保険 |
業務上・通勤による 負傷、疾病、障害、死亡等 | 老齢、障害、死亡 (業務上外は問わない) | 老齢、障害、死亡 (業務上外は問わない)
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例えば、民間企業のサラリーマンが業務上や通勤により死亡した場合は、労災保険と国民年金と厚生年金保険から、遺族に対して遺族年金が支給されることになります。が、すべて100%ずつ支給されるわけではありません。
ポイント!
「同一の事由」で労災保険の年金給付と社会保険(国民年金・厚生年金保険)が支給される場合は、労災保険の年金給付が減額されます。
※社会保険は本人が保険料を負担しているので減額するのは問題ありです。一方、労災保険の保険料は全額事業主負担(本人負担なし)なので労災保険の方を減額しましょうという考え方です。
ということでポイントは
「同一事由」による労災保険の年金給付と社会保険(国年・厚年)の調整 |
労災保険の年金給付 → 減額支給 |
社会保険(国年・厚年) → 全額支給 |
では、問題を解いてみましょう!
① H14年出題(労災)
同一の事由により厚生年金保険法の規定による遺族厚生年金又は国民年金法の規定による遺族基礎年金若しくは寡婦年金と併給される場合における遺族補償年金又は遺族年金の額は、政令所定の率を乗じて減額調整された額(政令所定の額を下回るときは、当該政令所定の額)となる。
② H12年出題(労災)
休業補償給付の額は、原則として1日につき給付基礎日額の100分の60に相当する額であるが、休業補償給付を受ける労働者が同一の事由について厚生年金保険法の規定による障害厚生年金又は国民年金法の規定による障害基礎年金を受けることができるときは、その額が調整されて減額されることになる。
③ H12年出題(労災)
労災保険の各種年金給付の額は、その受給者が同時に厚生年金保険法の規定による老齢厚生年金又は国民年金法の規定による老齢基礎年金を受けることができる場合でも、これらとは給付事由が異なるので、これらの事由により調整されて減額されることはない。
④ H26出題(国年)
遺族基礎年金の受給権者が、同一の支給事由により労災保険法の規定による遺族補償年金の支給を受けることができる場合、遺族基礎年金は支給停止されない。
⑤ H12年出題(国年)
障害基礎年金は、その受給権者が当該傷病による障害について、労働基準法の規定による障害補償を受けることができるときは、6年間、その支給を停止する。
【解答】
① H14年出題(労災) ○
「同一の事由」で社会保険(国年・厚年)の年金と労災保険の年金給付が支給される場合は、労災の年金給付が減額調整されるので○です。
なお、国民年金法の寡婦年金も「死亡」によって支給される年金ですので忘れないでくださいね。
② H12年出題(労災) ○
休業補償給付(休業給付)と厚生年金保険法の障害厚生年金又は国民年金法の障害基礎年金が同一事由で支給されることもあり得ます。その場合は、休業補償給付(休業給付)が減額調整されます。
労災保険は年金給付だけでなく、休業補償給付(休業給付)も減額調整の対象ですので押さえてくださいね。
③ H12年出題(労災) ○
労災保険の年金給付が減額調整されるのは「同一事由」の社会保険(国年・厚年)の年金です。老齢厚生年金・老齢基礎年金と同一事由の労災保険の年金給付はありませんので、同時に受ける労災の年金給付も減額調整されません。
④ H26出題(国年) ○
同一事由で、遺族基礎年金と労災保険法の遺族補償年金を受けることができる場合は、労災保険法の遺族補償年金が減額調整され、遺族基礎年金は全額支給されます。
⑤ H12年出題(国年) ○
労災保険の年金給付との調整と間違えないようにしてくださいね。
併給調整その2に続きます!
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