R4-195
1年単位の変形労働時間制は、対象期間の途中に採用された人、途中で退職した人も対象になります。
実際に労働した期間が、対象期間よりも短い場合、賃金の清算が必要になることがあります。
条文を読んでみましょう。
第32条の4の2 使用者が、対象期間中の前条の規定により労働させた期間が当該対象期間より短い労働者について、当該労働させた期間を平均し1週間当たり40時間を超えて労働させた場合においては、その超えた時間(第33条(災害等による臨時の場合)又は第36条第1項(三六協定)の規定により延長し、又は休日に労働させた時間を除く。)の労働については、第37条の規定の例により割増賃金を支払わなければならない。 |
例えば、1年単位の変形労働時間制の対象期間を1月1日から12月31日までの1年間で設定している場合で考えてみましょう。
対象期間中の労働時間の総枠は、40時間×365日÷7≒2085.71時間です。
総枠の範囲内でこのように所定労働時間を設定したとします。
↓
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
170時間 | 147時間 | 180時間 | 166時間 | 180時間 | 166時間 | 180時間 | 180時間 | 166時間 | 180時間 | 180時間 | 190時間 |
この場合、年間の所定労働時間のトータルは2085時間で、1年間を平均すると1週間の労働時間が40時間以内になります。
☆条文に当てはめてみると
『対象期間より短い労働者』
例えば、Aさんが対象期間の途中の6月1日に入社したような場合です。Aさんが実際に労働した期間は6月1日~12月31日までで対象期間より短い期間です。
『労働させた期間を平均し1週間当たり40時間を超えて労働させた』
Aさんが所定労働時間分だけ労働した場合、6月1日から12月31日までの実際の労働時間のトータルは1,242時間となります。
次に、6月1日から12月31日までの期間を平均して1週間当たり40時間以内になる労働時間の総枠は、40時間×214日÷7≒1222.8時間で計算できます。
実労働時間の1,242時間から1222.8時間を引くと19.2時間になりますが、この19.2時間が『労働させた期間を平均し1週間当たり40時間を超えて労働させた』部分に当たります。
『第37条の規定の例により割増賃金を支払わなければならない』
平均して1週間当たり40時間の枠を超えた19.2時間は、第37条の規定の例により割増賃金で清算することになります。
『(第33条(災害等による臨時の場合)又は第36条第1項(三六協定)の規定により延長し、又は休日に労働させた時間を除く。)』
例えば、36協定に基づいて時間外労働させた場合は、清算による割増賃金ではなく、本来の割増賃金の支払いが必要です。
過去問をどうぞ!
【H17年出題】
労働基準法第32条の4に規定するいわゆる1年単位の変形労働時間制を採用する事業場において、その対象となる労働者が対象期間中に退職した場合、当該労働者について、当該労働させた期間を平均し1週間当たり40時間を超えて労働させた場合においては、その超えた時間(同法第33条又は第36条第1項の規定により延長し、又は休日に労働させた時間を除く。)の労働については、同法第37条の規定の例により割増賃金を支払わなければならないが、これを支払わない場合には、同法第24条違反となる。
【解答】
【H17年出題】 〇
第37条違反ではなく、「第24条違反」になるのがポイントです。
最初に読んだ条文の「第37条の規定の例により」の部分に注目してください。
第37条は割増賃金の規定ですが、「第37条の規定の例により」とは、算定基礎賃金の範囲、割増率、計算方法等がすべて第37条と同じという意味です。
第37条の割増賃金ではないのがポイントです。そのため、清算のための割増賃金を支払わない場合は、第37条違反ではなく、第24条違反になります。
(平11.1.29基発45号)
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