R4-208
労働者に対して懲戒を行う際のルールを確認します。
労働契約法の条文を読んでみましょう。
第15条 (懲戒) 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。 |
この規定の趣旨、内容を確認しましょう。
■趣旨
懲戒は、使用者が企業秩序を維持し、企業の円滑な運営を図るために行われるものです。
しかし、「懲戒の権利濫用が争われた裁判例もみられる」、「懲戒は労働者に労働契約上の不利益を生じさせるものである」ことから、権利濫用に該当する懲戒による紛争を防止するために、労働契約法第15条で、権利濫用に該当するものとして無効となる懲戒の効力を規定しています。
■内容
・ 法第15条は、使用者が労働者を懲戒することができる場合でも、その懲戒が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には権利濫用に該当するものとして無効となることを明らかにしています。
また、権利濫用であるか否かを判断するに当たっては、労働者の行為の性質及び態様その他の事情が考慮されることを規定しています。
・ 法第15条の「懲戒」とは、労働基準法第89条第9号の「制裁」と同義です。同条により、当該事業場に懲戒の定めがある場合には、その種類及び程度について就業規則に記載することが義務付けられています。
→ 労働基準法第89条第9号は、就業規則の「相対的必要記載事項」です。
(参照:平成24年8月10日 基発0810第2号)
では、過去問をどうぞ!
①【H24年出題】
使用者が労働者を懲戒することができる場合においても、当該懲戒が、その権利を濫用したものとして、無効とされることがある。
②【R1年出題】
労働契約法第15条の「懲戒」とは、労働基準法第89条第9号の「制裁」と同義であり、同条により、当該事業場に懲戒の定めがある場合には、その種類及び程度について就業規則に記載することが義務付けられている。
③【H30年出題】
「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことをもって足り、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていない場合でも、労働基準法に定める罰則の対象となるのは格別、就業規則が法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずることに変わりはない。」とするのが、最高裁判所の判例である。
【解答】
①【H24年出題】 〇
使用者が労働者を懲戒することができる場合でも、懲戒が、「当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は、その権利を濫用したものとして、無効とされることがあります。
②【R1年出題】 〇
労働基準法第89条第9号は、「表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項」となっていて、就業規則の相対的必要記載事項です。
懲戒(制裁)の定めをする場合は、その種類及び程度について就業規則に記載しなければなりません。
③【H30年出題】 ×
「その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていない場合でも」が誤りです。就業規則が法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずるには、「適用をうける事業場の労働者への周知手続」が必要です。
(参照:フジ興産事件)
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