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「遺族補償給付」には、「遺族補償年金」と「遺族補償一時金」があります。
今回のテーマは「遺族補償一時金」です。
条文を読んでみましょう。
法第16条の6、16条の8 遺族補償一時金は、次の場合に支給する。 ① 労働者の死亡の当時遺族補償年金を受けることができる遺族がないとき。 → 給付基礎日額の1,000日分 ② 遺族補償年金を受ける権利を有する者の権利が消滅した場合において、他に当該遺族補償年金を受けることができる遺族がなく、かつ、当該労働者の死亡に関し支給された遺族補償年金の額及び遺族補償年金前払一時金の額の合計額が当該権利が消滅した日において前号に掲げる場合に該当することとなるものとしたときに支給されることとなる遺族補償一時金の額(給付基礎日額の1,000日分)に満たないとき。 → 「給付基礎日額の1,000日分」から「支給された遺族補償年金の額及び遺族補償年金前払一時金の額の合計額」を控除した額
法第16条の7 遺族補償一時金を受けることができる遺族は、次の各号に掲げる者とする。 1 配偶者 2 労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子、父母、孫及び祖父母 3 前号に該当しない子、父母、孫及び祖父母並びに兄弟姉妹 |
① 例えば、労働者の死亡の当時、遺族が障害状態にない50歳の夫のみだった場合、夫は、遺族補償年金を受けることはできませんが、遺族補償一時金(給付基礎日額の1,000日分)を受けられます。
② 例えば、労働者の死亡当時生計を維持されていた遺族が妻のみだった場合、妻は遺族補償年金を受けることができます。しかし、その後妻の受給権が消滅し、既に支給されていた年金が給付基礎日額の1,000日分に満たないときは、支給された年金の額の合計額との差額が支給されます。
遺族補償一時金を受ける遺族の順位
①配偶者(生計維持の有無は関係なし)
②生計維持していた子
③生計を維持していた父母
④生計を維持していた孫
⑤生計を維持していた祖父母
⑥生計を維持していなかった子
⑦生計を維持していなかった父母
⑧生計を維持していなかった孫
⑨生計を維持していなかった祖父母
⑩兄弟姉妹(生計維持の有無は関係なし)
過去問をどうぞ!
①【H10年出題】
遺族補償年金を受ける権利を有する死亡労働者の妻が再婚をした場合であっても、他に遺族補償年金の受給権者がいないときには、当該再婚をした妻は遺族補償一時金の請求権を有することがある。
②【H28年出題】
遺族補償年金の受給権を失権したものは、遺族補償一時金の受給権者になることはない。
③【H25年出題】
労働者が業務災害により死亡した場合、その祖父母は、当該労働者の死亡当時その収入により生計を維持していなかった場合でも、遺族補償一時金の受給者となることがある。
④【H28年出題】
労働者が業務災害により死亡した場合、その兄弟姉妹は、当該労働者の死亡の当時、その収入により生計を維持していなかった場合でも、遺族補償一時金の受給者となることがある。
【解答】
①【H10年出題】 〇
遺族補償年金を受けている妻が再婚をした場合、遺族補償年金の受給権は失権します。その場合、既に支給された年金の合計額が給付基礎日額の1,000日未満の場合は、差額が遺族補償一時金として支給されます。
労働者との身分関係は「労働者の死亡の当時」でみることがポイントです。再婚により遺族補償年金の受給権が失権した場合でも、労働者の死亡の当時は妻だったので、遺族補償一時金の請求ができます。
②【H28年出題】 ×
①の問題のように、遺族補償年金の受給権を失権したものでも、遺族補償一時金の受給権を得ることがあります。
③【H25年出題】 〇
「遺族補償年金」は、労働者の死亡の当時その収入により生計を維持していたことが条件ですが、「遺族補償一時金」は、労働者の死亡当時その収入により生計を維持していなかった場合でも、受給者となることがあります。
④【H28年出題】 〇
③の問題と同じです。
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