R6-071
過去問で解ける問題をみていきましょう。
今日は雇用保険法です。
まず、雇用保険法の「賃金」の定義を条文で読んでみましょう。
第4条第4項 「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの(通貨以外のもので支払われるものであって、厚生労働省令で定める範囲外のものを除く。)をいう。
則第2条 (通貨以外のもので支払われる賃金の範囲及び評価) ① 賃金に算入すべき通貨以外のもので支払われる賃金の範囲は、食事、被服及び住居の利益のほか、公共職業安定所長が定めるところによる。 ② 通貨以外のもので支払われる賃金の評価額は、公共職業安定所長が定める。 |
雇用保険法の「賃金」とは、労働の対償として事業主が労働者に支払うすべてものをいいます。ただし、「通貨以外のもの=現物給付」で支払われるものであって、則第 2条で定める範囲外のものは賃金となりません。
次に「賃金日額」の条文を読んでみましょう。
第17条第1項 (賃金日額) 賃金日額は、算定対象期間において被保険者期間として計算された最後の6か月間に支払われた賃金(臨時に支払われる賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く。)の総額を180で除して得た額とする。 |
「臨時」に支払われる賃金、「3か月を超える期間ごと」に支払われる賃金は、賃金日額の算定の基礎となる賃金から除外されます。
では、過去問をどうぞ!
①【H30年出題】
健康保険法第99条の規定に基づく傷病手当金が支給された場合において、その傷病手当金に付加して事業主から支給される給付額は、賃金と認められる。
②【H30年出題】
接客係等が客からもらうチップは、一度事業主の手を経て再分配されるものであれば賃金と認められる。
③【H26年出題】
月あたり一定の時間外労働があったものとみなして支給される定額残業手当が、実際に行われた時間外労働に基づいて算出された額を上回るとき、その差額は賃金に含まれない。
④【H26年出題】
事業主が労働の対償として労働者に住居を供与する場合、その住居の利益は賃金日額の算定対象に含まない。
【解答】
①【H30年出題】 ×
健康保険法第99条の規定に基づく傷病手当金は、健康保険の給付金ですので、「賃金とは認められません」。
その傷病手当金に付加して事業主から支給される給付額は、「恩恵的給付」となり、「賃金とは認められません」。
(行政手引50502 「賃金と解されないものの例」)
②【H30年出題】 〇
チップは接客係等が客からもらうもので、賃金とは認められません。
ただし、一度事業主の手を経て再分配されるものは「賃金と認められます」。
(行政手引50502 「賃金と解されないものの例」)
③【H26年出題】 ×
賃金とは、「事業主が労働者に支払ったものであること」、「労働の対償として支払ったものであること」の要件があります。
定額残業手当が、実際に行われた時間外労働に基づいて算出された額を上回るとき、その差額は、「労働の対償として支払われるもの」となり、「賃金に含まれます」。
④【H26年出題】 ×
「住居の利益」は賃金となりますので、賃金日額の算定対象に「含まれます」。
通貨以外のもので支払われる賃金(=現物給与)の範囲は、食事、被服及び住居の利益のほか、公共職業安定所長が定めるところによります。食事、被服及び住居の利益は公共職業安定所長が定めるまでもなく賃金の範囲に算入されます。
(行政手引50403「賃金の範囲に算入される現物給与」、行政手引50501「賃金と解されるものの例」)
では、令和5年の問題をどうぞ!
【R5年出題】
退職金相当額の全部又は一部を労働者の在職中に給与に上乗せする等により支払う、いわゆる「前払い退職金」は、臨時に支払われる賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金に該当する場合を除き、原則として、賃金日額の算定の基礎となる賃金の範囲に含まれる。
【解答】
【R5年出題】 〇
いわゆる「前払い退職金」は、、原則として、賃金日額の算定の基礎となる賃金の範囲に含まれます。
なお、労働者の退職後に一時金又は年金として支払われる退職金は、賃金日額算定の基礎に算入されません。
(行政手引50503)
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