R6-180
今日は、いただきましたご質問のお返事です。
ご質問の内容です。
継続事業にかかるメリット制が適用された場合の労災保険率の引き上げ、引き下げの意味がよくわかりません。 |
労災保険率は、労災発生のリスクによって「事業の種類」ごとに、1000分の2.5から1000分の88の範囲で決められています。
ただし、事業の種類が同じでも、労災が発生する会社もあれば、発生しない会社もあります。
例えば、大きな労働災害が発生した事業場(=労災保険から保険給付が行われた)も、労働災害が発生しなかった事業場(=労災保険から保険給付を受けていない)も、「事業の種類」が同じなら、労災保険率も同じです。
しかし、メリット制が適用されると、災害率が高い場合は、労災保険率が引き上げられ、逆に低い場合は、労災保険率が引き下げられますので、保険料負担の公平性が保たれます。
■では、継続事業と一括有期事業にメリット制が適用される条件を確認しましょう。
①事業の継続性を満たすこと
連続する3保険年度中の最後の保険年度に属する3月31日(基準日)に労災保険に係る保険関係が成立した後3年以上経過していること
②事業の規模を満たすこと
連続する3保険年度中の各保険年度に次の(A)~(C)のいずれかに該当する事業であること
(A) 100人以上の労働者を使用する事業
(B) 20人以上100人未満の労働者を使用する事業で、災害度係数が0.4以上であるもの
(C) 一括有期事業は、各保険年度において確定保険料の額が40万円以上
■次に、メリット制が適用される時期を確認しましょう。
・基準日の属する保険年度の次の次の保険年度から適用されます。
①年度 | ②年度 | ③年度 | ④年度 | ⑤年度 |
連続する3保険年度 (収支率を算定) |
| メリット制適用 | ||
|
| ③年度の3/31(基準日) |
|
|
■「収支率」を確認しましょう。
メリット収支率は、簡単に言いますと、連続する3保険年度中の「保険料に対する保険給付の割合」です。
メリット収支率は、保険料も保険給付も「業務災害」に関する部分で計算するのがポイントです。
保険給付+特別支給金 |
保険料 |
★メリット収支率が85%超える場合
→ 保険給付の割合が高い=災害発生率が高いということです。継続事業では、労災保険率が最大で40%引き上げられます。
★メリット収支率が75%以下の場合
→ 保険給付の割合が小さいので、継続事業では労災保険率が最大で40%引き下げられます。
★メリット収支率が75%超え85%以下の場合
→労災保険率の引上げ引き下げはありません。
■メリット制が適用された場合の労災保険率を確認しましょう。
例えば、労災保険率が1000分の9の場合、そのうち1000分の0.6は非業務災害率で、1000分の8.4が業務災害に当たる率です。なお、非業務災害率は、全事業共通です。
メリット制で引上げ引き下げの対象になるのは、「業務災害」に当たる部分の率です。
例えば、業務災害が起こらなかった事業(労災の保険給付が行われなかった事業)の場合、メリット収支率は0となり、労災保険率のうち、非業務災害率を除いた率が40%引き下げられます。
9-0.6 | × | 100-40 | + | 0.6 |
1000 | 100 |
| 1000 | |
↑ 非業務災害率を除いた率 |
| ↑ 40%減 |
| ↑ 非業務災害率 |
基準日の属する保険年度の次の次の保険年度からの労災保険率は、1000分の5.64になります。非業務災害率はメリット制の対象になりませんが、労災保険率には入りますので、注意しましょう。
では、次にメリット収支率が180%の場合です。労災保険率のうち、非業務災害率を除いた率が40%引き上げられます。
9-0.6 | × | 100+40 | + | 0.6 |
1000 | 100 |
| 1000 | |
↑ 非業務災害率を除いた率 |
| ↑ 40%増 |
| ↑ 非業務災害率 |
基準日の属する保険年度の次の次の保険年度からの労災保険率は、1000分の12.36になります。
では、過去問もどうぞ!
①【R2年出題(労災)】
メリット制においては、個々の事業の災害率の高低等に応じ、事業の種類ごとに定められた労災保険率を一定の範囲内で引上げ引き下げた率を労災保険率とするが、雇用保険率についてはそのような引上げや引下げは行われない。
②【R2年出題(労災)】
メリット収支率の算定基礎に、労災保険特別支給金支給規則の規定による特別支給金で業務災害に係るものは含める。
③【R2年出題(労災)】
労災保険率をメリット制によって引き上げ又は引き下げた率は、当該事業についての基準日の属する保険年度の次の次の保険年度の労災保険率となる。
【解答】
①【R2年出題(労災)】 〇
雇用保険率には、メリット制はありません。
(第12条第3項)
②【R2年出題(労災)】 〇
メリット収支率の分子は、業務災害に係る保険給付ですが、「特別支給金で業務災害に係るもの」も含みます。
(第12条第3項)
③【R2年出題(労災)】 〇
メリット制によって引き上げ又は引き下げた率は、基準日の属する保険年度の次の次の保険年度の労災保険率となります。
(第12条第3項)
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