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社会保険労務士合格研究室

令和5年の問題より 労災保険法

R6-133

R6.1.7 複数業務要因災害に係る労災保険給付額

まず、用語の定義を確認しましょう。

 

複数事業労働者とは

 事業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者のことです。(法第1条)

複数業務要因災害とは

 複数事業労働者(これに類する者として厚生労働省令で定めるものを含む。)二以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、障害又は死亡のことです。(法第7条)

 複数業務要因災害の対象になる傷病は、脳・心臓疾患、精神障害などです。

 

では、令和5年の問題をどうぞ!

R5年出題】

 新卒で甲会社に正社員として入社した労働者Pは、入社1年目の終了時に、脳血管疾患を発症しその日のうちに死亡した。Pは死亡前の1年間、毎週月曜から金曜に18時間甲会社で働くと同時に、学生時代からパートタイム労働者として勤務していた乙会社との労働契約も継続し、日曜に乙会社で働いていた。また、死亡6か月前から4か月前は丙会社において、死亡3か月前から死亡時までは丁会社において、それぞれ3か月間の期間の定めのある労働契約でパートタイム労働者として、毎週月曜から金曜まで甲会社の勤務を終えた後に働いていた。Pの遺族は、Pの死亡は業務災害又は複数業務要因災害によるものであるとして所轄労働基準監督署長に対し遺族補償給付又は複数事業労働者遺族給付の支給を求めた。当該署長は、甲会社の労働時間のみでは業務上の過重負荷があったとはいえず、Pの死亡は業務災害によるものとは認められず、また甲会社と乙会社の労働時間を合計しても業務上の過重負荷があったとはいえないが、甲会社と丙会社・丁会社の労働時間を合計した場合には業務上の過重負荷があったと評価でき、個体側要因や業務以外の過重負荷により発症したとはいえないことから、Pの死亡は複数業務要因災害によるものと認められると判断した。Pの遺族への複数事業労働者遺族給付を行う場合における給付基礎日額の算定に当たって基礎とする額に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(A) 甲会社につき算定した給付基礎日額である。

(B) 甲会社・乙会社それぞれにつき算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額である。

(C) 甲会社・丁会社それぞれにつき算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額である。

(D) 甲会社・丙会社・丁会社それぞれにつき算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額である。

(E) 甲会社・乙会社・丁会社それぞれにつき算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額である。

 

 

 

 

 

 

 

【解答】  E

■ 複数事業労働者の給付基礎日額の算定は、「当該複数事業労働者を使用する事業ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額とする。ただし、第9条第1項第5号の規定は、適用しない。」と」規定されています。(則第9条の221号)

 

■ 複数事業労働者の平均賃金相当額の算定期間と算定方法の「原則」を確認しましょう。

 複数事業労働者に係る平均賃金相当額の原則的な算定期間は、傷病等の発生した日又は診断によって疾病の発生が確定した日(以下「算定事由発生日」という。)以前3か月間であり、平均賃金相当額を算定すべき各事業場において賃金締切日がある場合は事業場ごとに算定事由発生日から直近の賃金締切日より起算すること。

(令和2821日基発08212) 

 

 

 次に「複数業務要因災害」の場合を確認しましょう。

 複数業務要因災害は原則として脳・心臓疾患及び精神障害を想定しています。

 複数業務要因災害として認定される場合、どの事業場においても業務と疾病等との間に相当因果関係は認められません

・遅発性疾病等の診断が確定した日にいずれかの事業場に使用されている場合は、当該事業場について当該診断確定日(賃金の締切日がある場合は直前の賃金締切日をいう。)以前3か月に支払われた賃金により平均賃金相当額を算定します。

・遅発性疾病等の診断が確定した日から3か月前の日を始期として、遅発性疾病等の診断が確定した日までの間に他の事業場から賃金を受けている場合は、当該事業場の平均賃金相当額について、直前の賃金締切日以前3か月間において支払われた賃金により算定します

(令和2821日基発08212)

 

 

 

4か月前

  ▼

 

3か月前

死亡

甲会社

 

 

乙会社

 

 

丙会社

 

 

 

丁会社

 

 

 

 

 遅発性疾病等の診断が確定した日に使用されている「甲会社」、「乙会社」、「丁会社」で診断確定日以前3か月間(賃金締切日がある場合は、直近の賃金締切日以前3か月間)に支払われた賃金で平均賃金相当額を算定します。

 丙会社は、「3か月前の日を始期として、遅発性疾病等の診断が確定した日までの間」に賃金を受けていませんので、計算に入りません。

(令和2821日基発08212)

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