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まず、労働基準法の「解雇制限」の条文を読んでみましょう
労働基準法第19条 (解雇制限) ① 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。 ただし、使用者が、第81条の規定によって打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない。 ② ①の但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。 |
労働基準法では、労働者が「業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間」は解雇禁止としています。
ただし、「使用者が打切補償を支払う場合」は解雇できる例外が設けられています。
では、次に打切補償の条文を読んでみましょう。
第81条 (打切補償) 療養補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を行い、その後は労働基準法の規定による補償を行わなくてもよい。 |
労働基準法では、労働者が「業務上」負傷し、又は疾病にかかった場合、使用者に「療養補償」をする義務を課しています。
療養補償はなおるまで行わなければなりません。しかし、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合は、「打切補償」を行うことによって、以後補償する義務はなくなります。
「療養のために休業する期間及びその後30日間」は解雇が禁止されているのは、使用者に補償義務があるからです。「打切補償」を支払うと補償義務もなくなるので、解雇もできることになります。
しかし、業務上の負傷、疾病については、実際には労災保険法で補償が行われます。
ですので、使用者が労働基準法の療養補償を行うことはありません。そして、打切補償を行うこともありません。
労災保険法では、「傷病補償年金」を受けていることによって「打切補償」を行ったとみなす規定が設けられています。
「傷病補償年金」を受けているということは、「なおっていない」ことなので、解雇はできないことを頭において条文を読んでみてください。
労災保険法第19条 業務上負傷し、又は疾病にかかった労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後3年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合又は同日後において傷病補償年金を受けることとなった場合には、労働基準法第19条第1項の規定の適用については、当該使用者は、それぞれ、当該3年を経過した日又は傷病補償年金を受けることとなった日において、同法第81条の規定により打切補償を支払ったものとみなす。 |
労働基準法の「打切補償」が療養開始後3年を経過してもなおらない場合なので、この条文も「3年」がキーワードです。
①療養の開始後3年を経過した日に傷病補償年金を受けている場合
②療養開始後3年を経過した日後に傷病補償年金を受けることとなった場合
①は「3年を経過した日」、②は「傷病補償年金を受けることとなった日」に「打切補償」を支払ったものとみなされ、解雇することができるようになります。
(下の図も参考にしてください)
次回は、「問題編」です。
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