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社会保険労務士合格研究室

ここを乗り越えよう!厚生年金保険法

R4-153

R4.1.22 障害厚生年金 額の改定その3 3級から2級へ②65歳以上の場合

 障害認定日に3級だったものが、その後2級に増進した場合、障害厚生年金は3級から2級に改定、障害基礎年金は事後重症になることを、前回お話しました。

 しかし、3級から2級に増進したときに65歳以上だった場合は注意が必要です。今回は、65歳以上で障害の程度が増進した場合がテーマです。

 

 では、第52条の条文を見てみましょう。

第52条

① 実施機関は、障害厚生年金の受給権者について、その障害の程度を診査し、その程度が従前の障害等級以外の障害等級に該当すると認めるときは、その程度に応じて、障害厚生年金の額を改定することができる

② 障害厚生年金の受給権者は、実施機関に対し、障害の程度が増進したことによる障害厚生年金の額の改定を請求することができる

③ ②の請求は、障害厚生年金の受給権者の障害の程度が増進したことが明らかである場合として厚生労働省令で定める場合を除き、当該障害厚生年金の受給権を取得した日又は①の規定による実施機関の診査を受けた日から起算して1年を経過した日後でなければ行うことができない。

④から⑥は省略

 

⑦ ①から③まで及び前項の規定は、65歳以上の者であって、かつ、障害厚生年金の受給権者(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づく国民年金法による障害基礎年金の受給権を有しないものに限る。)については、適用しない。

 

★⑦に注目してください。

「当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づく国民年金法による障害基礎年金の受給権を有しないもの」とは、「受給権を取得した当時から1度も障害等級1級又は2級に該当したことがない」という意味です。

 65歳以上の3級の障害厚生年金の受給権者(同一の支給事由に基づく障害基礎年金の受給権を有しないもの)には、1・2級への等級改定は行われません。

 「障害基礎年金の事後重症」の適用は、65歳に達する日の前日までに限られています。そのため、65歳以上の3級の障害厚生年金の受給権者の障害の程度が増進しても、事後重症の障害基礎年金の受給権は発生しません。

 ですので、65歳以降は3級から1・2級への改定は行わないことになっています。1・2級の障害厚生年金だけ支給されることがないようにするためです。

 

では、過去問をどうぞ

 

①【H23年出題】

 老齢基礎年金(繰上げ支給を含む。)の受給権者又は65歳以上の者であって、かつ障害厚生年金の受給権者(当該障害厚生年金と同一事由に基づく障害基礎年金(障害の程度により支給停止となっているものを含む。)の受給権を有しないものに限る。)は、障害の程度が増進しても障害厚生年金の額の改定請求をすることができない。

 

 

②【H27年出題】

63歳の障害等級3級の障害厚生年金の受給権者(受給権を取得した当時から引き続き障害等級1級又は2級に該当したことはなかったものとする。)が、老齢基礎年金を繰上げ請求した場合において、その後、当該障害厚生年金に係る障害の程度が増進したときは、65歳に達するまでの間であれば実施機関に対し、障害の程度が増進したことによる障害厚生年金の額の改定を請求することができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

【解答】

①【H23年出題】 〇

65歳以上の者だけでなく、老齢基礎年金を繰り上げて受給している者も、事後重症の障害基礎年金は請求できません。

 また、「障害厚生年金の受給権者(当該障害厚生年金と同一事由に基づく障害基礎年金(障害の程度により支給停止となっているものを含む。)の受給権を有しないものに限る。)」とは、受給権を取得した当時から3級で、1度も1級・2級に該当したことがないという意味です。

 問題文の「老齢基礎年金(繰上げ支給を含む。)の受給権者又は65歳以上の者」は、事後重症の障害基礎年金の請求ができません。ですので、障害の程度が3級から増進しても、障害厚生年金の額の改定請求はできません。

(法第52条第7項、法附則第16条の3

 

 

②【H27年出題】 ×

 「老齢基礎年金を繰上げ請求している」かつ「3級の障害厚生年金の受給権者(受給権を取得した当時から引き続き障害等級1級又は2級に該当したことはなかったものとする。)」は、障害の程度が増進しても、障害厚生年金の額の改定は請求できません。

(法第52条第7項、法附則第16条の3

 

 

もう一問どうぞ!

③【R2年出題】

 障害等級2級に該当する障害基礎年金及び障害厚生年金の受給権者が、症状が軽減して障害等級3級の程度の障害の状態になったため当該2級の障害基礎年金は支給停止となった。その後、その者が65歳に達した日以後に再び障害の程度が増進して障害等級2級に該当する程度の障害の状態になった場合、障害等級2級の障害基礎年金及び障害厚生年金は支給されない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【解答】

③【R2年出題】 ×

 この問題は、2級の障害状態に該当していたことがあり、障害基礎年金の受給権があることがポイントです。

 2級だったものが、症状が軽減して3級の程度になった場合、障害厚生年金は3級、障害基礎年金は支給停止となります。

 その後、再び2級に該当した場合、障害厚生年金は3級から2級に改定、障害基礎年金は支給停止が解除され、2級の障害基礎年金と障害厚生年金が支給されます。

この場合は、65歳に達した日以後でも、3級から2級に額の改定が行われます。

(下の図も参考にしてください。) 

社労士受験のあれこれ