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社会保険労務士合格研究室

ここを乗り越えよう!厚生年金保険法

R4-187

R4.2.25 遺族厚生年金に遺族基礎年金相当額が加算されるとき

 例えば、海外に居住している1級の障害厚生年金を受給中の夫(35歳)、妻(35歳)、子(10歳)の家族で、夫が死亡した場合を考えてみます。

 夫は国内では第1号被保険者でしたが、日本国内に住所を有しなくなったため、国民年金の被保険者の資格を喪失しています。なお、任意加入もしていません。

 夫の死亡により、遺族厚生年金と遺族基礎年金は支給されるでしょうか?

 

・遺族厚生年金は?

  → 「障害等級の1級又は2級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が、死亡したとき」に該当しますので、要件を満たせば妻と子に受給権が発生します。

・では、遺族基礎年金は?

  → 遺族基礎年金は次の4つのどれかに該当することが条件です。

(国民年金法第37条)

① 被保険者が、死亡したとき。

② 被保険者であった者であって、日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満であるものが、死亡したとき。

③ 老齢基礎年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者に限る。)が、死亡したとき。

④ 保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者が、死亡したとき。

 

 死亡した夫は4つのどれにも該当しませんので、遺族基礎年金は支給されません。

 

 このように、遺族厚生年金は支給されても、妻と子が生計を同じくしているのに、遺族基礎年金が支給されないケースがあります。

 そこで、遺族厚生年金に遺族基礎年金相当額が加算される規定があります。

 条文で確認しましょう。

昭和60年附則第74条 

① 配偶者に支給する遺族厚生年金の額は、当該厚生年金保険の被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その配偶者が厚生年金保険法第59条第1項に規定する要件に該当した子と生計を同じくしていた場合であって、当該厚生年金保険の被保険者又は被保険者であった者の死亡につきその配偶者が遺族基礎年金の受給権を取得しないときは、同法第60条第1項第1号及び第62条第1項の規定にかかわらず、これらの規定の例により計算した額に国民年金法第38条(遺族基礎年金の額)及び第39条第1項(子の加算額)の規定の例により計算した額を加算した額とする。

★ この規定により、先ほどのケースの妻の遺族厚生年金には、遺族基礎年金の額と子の加算額に相当する額が加算されます。

 

では、過去問をどうぞ

①【H29年出題】(改正による修正あり)

 国外に居住する障害等級2級の障害厚生年金の受給権者が死亡した。死亡の当時、この者は、国民年金の被保険者ではなく、また、保険料納付済期間と保険料免除期間と合算対象期間を合算した期間が25年未満であった。この者によって生計を維持していた遺族が5歳の子1人であった場合、その子には遺族基礎年金は支給されないが、その子に支給される遺族厚生年金の額に遺族基礎年金の額に相当する額が加算される。

 

 

②【H18年出題】

 遺族基礎年金の受給権を取得しない子に支給される遺族厚生年金の額については、遺族厚生年金の額に、遺族基礎年金の額及び子の加算額に相当する額を加算した額とする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【解答】

①【H29年出題】(改正による修正あり) 〇

最初に説明したのは、妻と子の例でしたが、この問題のように遺族が「子」のみの場合でも、遺族厚生年金に遺族基礎年金の額に相当する額が加算されます。

 昭和60年附則第74条第2項に次のように規定されています。

 子に支給する遺族厚生年金の額は、当該厚生年金保険の被保険者又は被保険者であった者の死亡につきその子が遺族基礎年金の受給権を取得しないときは、厚生年金保険法第60条第1項第1号及び第2項の規定にかかわらず、これらの規定の例により計算した額に国民年金法第38条(遺族基礎年金の額)及び第39条の2第1項(子の加算額)の規定の例により計算した額を加算した額とする。

(昭和60年附則第74条第2項)

 

 

②【H18年出題】 〇

 ①の問題と同じです。

(昭和60年附則第74条第2項)

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