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社会保険労務士合格研究室

労働基準法(就業規則)

R4-211 

R4.3.21 制裁規定の制限

 「制裁」には、譴責、戒告、出勤停止、減給、懲戒解雇などがあります。公序良俗に反しない限り、就業規則に定めることができます。

 ただし、「減給」については、労働基準法で制限が設けられています。

 減給は、労働した分の賃金をカットすることです。何も規制が無いと、例えば1回の遅刻に対する制裁として、1か月分の賃金を全てカットすることもできてしまうからです。

 

 では、減給制裁の制限を条文で読んでみましょう。

第91条 (制裁規定の制限)

 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、 1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。

 

 減給制裁は、「1回の額は平均賃金1日分の半額以内」、「一賃金支払期に発生した数事案に対する減給の総額は、一賃金支払期の賃金の総額の10分の1以内」となっています。

(昭23.9.20基収1789号)

 例えば、平均賃金が1万円、一賃金支払期の賃金総額が20万円なら、1回の額は5千円以内、一賃金支払期に減額できるのは2万円以内となります。

では、過去問をどうぞ!

①【R2年出題】

 労働者が、遅刻・早退をした場合、その時間に対する賃金額を減給する際も労働基準法第91条による制限を受ける

 

 

②【H28年出題】

 服務規律違反に対する制裁として一定期間出勤を停止する場合、当該出勤停止期間中の賃金を支給しないことは、減給制限に関する労働基準法第91条違反となる。

 

 

③【R3年出題】

 労働基準法第91条にいう「一賃金支払期における賃金の総額」とは、「当該賃金支払期に対し現実に支払われる賃金の総額」をいい、一賃金支払期に支払われるべき賃金の総額が欠勤や遅刻等により少額となったときは、その少額となった賃金総額を基礎として10分の1を計算しなければならない。

 

 

④【H16年出題】

 就業規則で労働者に対して減給の定めをする場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならず、もし、これを超えて減給の制裁を行う必要が生じた場合においても、その部分の減給は、次期の賃金支払期に延ばすことはできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【解答】

①【R2年出題】 ×

 例えば、1時間遅刻した場合に、1時間分の賃金を差し引くことは、制裁による減給に該当しませんので、労働基準法第91条による制限は受けません。

 ただし、1時間の遅刻に対して2時間分を減給することは制裁とみなされ、第91条による制限を受けることになります。

(昭63.3.14基発150号)

 

 

②【H28年出題】 ×

 出勤停止期間中の賃金を支給しないことは、「制裁としての出勤停止の当然の結果」で、減給制限に関する労働基準法第91条には関係ない、とされています。

(昭23.7.3基収2177号)

 

 

③【R3年出題】 〇

 「一賃金支払期における賃金の総額」とは、当該賃金支払期に対し「現実に」支払われる賃金の総額をいいます。

(昭23.9.20基収1789号)

 

 

④【H16年出題】 ×

 1賃金支払期の賃金総額が20万円の場合は、減給の総額は2万円以内です。もし、25千円の減給の制裁を行う必要がある場合は、5千円分は次期の賃金支払期に延ばすことができます。

 「もし、これを超えて減給の制裁を行う必要が生じた場合においても、その部分の減給は、次期の賃金支払期に延ばすことはできない」は誤りです。

(昭23.9.20基収1789号)

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