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社会保険労務士合格研究室

厚生年金保険法 遺族厚生年金

R5-284

R5.6.7 遺族厚生年金の短期要件と長期要件

 遺族厚生年金には、「短期要件」と「長期要件」があります。

 条文を読んでみましょう。

58条 

① 遺族厚生年金は、被保険者又は被保険者であった者が次の各号のいずれかに該当する場合に、その者の遺族に支給する。

 ただし、又はに該当する場合にあっては、死亡した者につき、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たないときは、この限りでない。

被保険者(失踪の宣告を受けた被保険者であった者であって、行方不明となった当時被保険者であったものを含む。)が、死亡したとき。

被保険者であった者が、被保険者の資格を喪失した後に、被保険者であった間に初診日がある傷病により当該初診日から起算して5年を経過する日前に死亡したとき。

 障害等級の1級又は2級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が、死亡したとき。

老齢厚生年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者に限る。)又は保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者が、死亡したとき。

 

② 死亡した被保険者又は被保険者であった者がからまでのいずれかに該当し、かつ、にも該当するときは、その遺族が遺族厚生年金を請求したときに別段の申出をした場合を除き、からまでのいずれかのみに該当し、には該当しないものとみなす。

 

短期要件と長期要件を確認しましょう

 

 

*1

短期要件

厚生年金保険加入中に死亡

あり

厚生年金保険加入中に初診日がある傷病により資格喪失後に死亡(初診日から5年以内)

あり

1、2級の障害厚生年金の受給権者が死亡

なし

長期

老齢厚生年金の受給権者(25年以上2)が死亡

 25年以上2ある者が死亡

なし

*1 保険料納付要件

*2 保険料納付済期間+保険料免除期間が25年以上

 

★「長期要件」は、厚生年金保険の被保険者期間が25年以上ではなく、「保険料納付済期間+保険料免除期間」が25年以上です。25年以上は、国民年金全体(第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者)で計算します。

 

★「長期要件」の25年以上の計算には合算対象期間も算入します。「保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が25年以上である者に限る」となります。

(附則第14条)

 

★例えば、保険料納付済期間+保険料免除期間が25年以上ある人が、厚生年金保険の被保険者であるとき(在職中)に死亡した場合、短期要件と長期要件の両方に当てはまります。

 その場合は、「その遺族が遺族厚生年金を請求したときに別段の申出をした場合を除き、短期要件のいずれかのみに該当し、長期要件には該当しないもの」とみなされます。

 申出がなければ、短期要件の扱いになります。

 

では、過去問をどうぞ!

①【H27年出題】※改正による修正あり

 老齢厚生年金の受給権者(保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が25年以上である者に限る)が死亡したことにより支給される遺族厚生年金の額の計算における給付乗率については、死亡した者が昭和2141日以前に生まれた者であるときは、生年月日に応じた読み替えを行った乗率が適用される。

 

②【H17年出題】※改正による修正あり

 老齢厚生年金の受給権者(保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が25年以上である者に限る)の死亡により支給される遺族厚生年金の額の計算において、計算の基礎となる被保険者期間の月数に300月の最低保障は適用されないが、給付乗率については生年月日に応じた乗率が適用される。

 

③【H26年出題】

 障害等級2級の障害厚生年金を受給する者が死亡した場合、遺族厚生年金を受けることができる遺族の要件を満たした者は、死亡した者の保険料納付要件を問わず、遺族厚生年金を受給することができる。この場合、遺族厚生年金の額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が300か月に満たないときは、これを300か月として計算する。

 

④【R3年出題】

20歳から30歳まで国民年金の第1号被保険者、30歳から60歳まで第2号厚生年金被保険者であった者が、60歳で第1号厚生年金被保険者となり、第1号厚生年金被保険者期間中に64歳で死亡した。当該被保険者の遺族が当該被保険者の死亡当時生計を維持されていた60歳の妻のみである場合、妻が別段の申出をしたときを除き、厚生年金保険法第58条第1項第4号に規定するいわゆる長期要件のみに該当する遺族厚生年金として年金額が算出される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【解答】

①【H27年出題】 〇

<報酬比例部分の「給付乗率について>

遺族厚生年金の原則の計算式は、報酬比例部分×4分の3です。

 報酬比例部分の計算式は、平成154月以降の期間分については、「平均標準報酬額×1000分の5.481×被保険者期間の月数」です。

 「長期要件」の場合は、死亡した者が昭和2141日以前生まれの場合、給付乗率は生年月日に応じた読み替えが行われます。

 なお、「短期要件」の場合は、定率(1000分の5.481H154月以降)か1000分の7.125H153月以前))です。

S60年附則第59条)

 

②【H17年出題】 〇

 「長期要件」の場合の給付乗率には、生年月日に応じた乗率が適用されます。

 一方、被保険者期間の月数は「300月の最低保障」は適用されず、実際の被保険者期間で計算されます。

 なお、「短期要件」の場合は、計算の基礎となる被保険者期間の月数に300月の最低保障が適用されます。

 

 

③【H26年出題】 〇

 「障害等級2級の障害厚生年金を受給する者」の死亡で支給される遺族厚生年金は、「短期要件」です。被保険者期間の月数が300か月に満たないときは、300か月として計算されます。

(法第60条第1項)

 

短期要件

長期要件

給付乗率

定率

生年月日に応じた読み替えあり

被保険者期間が300月未満

最低保障あり

最低保障なし

 

 

④【R3年出題】 ×

 第1号厚生年金被保険者期間中に64歳で死亡 → 短期要件

・ 保険料納付済期間が40年ある → 長期要件

 申出がなければ、「短期要件」のみに該当する遺族厚生年金として年金額が算出され

ます。

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