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社会保険労務士合格研究室

令和7年選択式(労働基準法)から学ぶ

R8-013 9.06

R7年選択式は判例からの出題(労基法)

 令和7年度の労働基準法の選択式は、

①付加金

②判例

からの出題でした。

今回は②判例の問題をみていきます。

 

まず過去問をどうぞ!

H22年選択式】

 賞与の対象期間の出勤率が90%以上であることを賞与の支給要件とする就業規則の規定における出勤率の算定に当たり、労働基準法第65条の定める産前産後休業等を出勤日数に含めない取扱いについて、「労働基準法65条〔等〕の趣旨に照らすと、これにより上記権利〔産前産後休業の取得の権利〕等の行使を抑制し、ひいては労働基準法等が上記権利等を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められる場合に限り、  < A >として無効となる」とするのが最高裁判所の判例である。

<選択肢>

① 権利の濫用   ② 公序に反するもの   ③ 信義に反するもの

④ 不法行為

 

 

 

 

 

【解答】

A> ② 公序に反するもの

ポイント!

 「従業員の年間総収入額に占める賞与の比重が高いため,上記条項により賞与が支給されない者の受ける経済的不利益が大きく、従業員が産前産後休業を取得し又は勤務時間短縮措置を受けた場合には、それだけで上記条項に該当して賞与の支給を受けられなくなる可能性が高いという事情の下においては、「公序に反し無効である。」とされています。

(東朋学園事件 平成15.12.4最高裁判所第一小法廷)

 

 

では、令和7年の問題をどうぞ!

R7年選択式】

 最高裁判所は、就業規則として定める給与規程における、出勤率が90%以上の従業員を賞与支給対象者とする旨の条項(以下本問において「本件90%条項」という。)の適用に関し、その基礎とする出勤した日数に産前産後休業の日数等を含めない旨の定めが労働基準法(平成9年法律第92号による改正前のもの)65条等に反するか等が問題となった事件において、次のように判示した。

 「労働基準法65条は、産前産後休業を定めているが、産前産後休業中の賃金については何らの定めを置いていないから、産前産後休業が有給であることまでも保障したものではないと解するのが相当である。〔(略)〕したがって、産前産後休業を取得し〔(略)〕た労働者は、その間就労していないのであるから、労使間に特段の合意がない限り、その不就労期間に対応する賃金請求権を有しておらず、当該不就労期間を出勤として取り扱うかどうかは原則として労使間の合意にゆだねられているというべきである。

 ところで、従業員の出勤率の低下防止等の観点から、出勤率の低い者につきある種の経済的利益を得られないこととする措置ないし制度を設けることは、一応の経済的合理性を有するものである。上告人の給与規程は、賞与の支給の詳細についてはその都度回覧にて知らせるものとし、回覧に具体的な賞与支給の詳細を定めることを委任しているから、本件各回覧文書〔本件90%条項の適用に関し、産前産後休業については、出勤率算定の基礎とする出勤すべき日数に算入し、出勤した日数には含めない旨を定めた文書〕は、給与規程と一体となり、本件90%条項等の内容を具体的に定めたものと解される。本件各回覧文書によって具体化された本件90%条項は、労働基準法65条で認められた産前産後休業を取る権利〔(略)〕に基づく不就労を含めて出勤率を算定するものであるが、上述のような労働基準法65条〔(略)〕の趣旨に照らすと、これにより上記権利等の行使を抑制し、ひいては労働基準法等が< C >場合に限り、公序に反するものとして無効となると解するのが相当である」。

<選択肢>

⑤ 使用者に労働者の仕事と生活の調和にも配慮することを規定している趣旨を実質的に失わせるものと認められる

⑥ 上記権利等を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められる

⑪ 同法等に違反する行為に罰則を設けている意味を没却させる

⑳ 労働条件は労働者と使用者が対等の立場において決定すべきものとしている意味を没却させる

 

 

 

 

 

【解答】

C> ⑥ 上記権利等を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められる

裁判要旨を読んでみましょう。

 出勤率が90%以上の従業員を賞与支給対象者としこれに満たない者には賞与を支給しないこととする旨の就業規則条項の適用に関し、出勤率算定の基礎とする出勤すべき日数に産前産後休業の日数を算入し、出勤した日数に上記日数及び育児を容易にするための措置により短縮された勤務時間分を含めない旨を定めた就業規則の付属文書の定めは、従業員の年間総収入額に占める賞与の比重が高いため、上記条項により賞与が支給されない者の受ける経済的不利益が大きく、従業員が産前産後休業を取得し又は勤務時間短縮措置を受けた場合には、それだけで上記条項に該当して賞与の支給を受けられなくなる可能性が高いという事情の下においては、公序に反し無効である。

(東朋学園事件 平成15.12.4最高裁判所第一小法廷)

 

問題の考え方です

 産前産後休業を取得すると、90%条項を満たせず、賞与を受けられなくなる可能性が高い → 「労働基準法の産前産後休業を取得する権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められる」と考えましょう。

 

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→ https://youtu.be/j5CJ00wSJbQ?si=QVrzAbSxXLLxNjDD

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