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社会保険労務士合格研究室

厚生年金保険法「報酬比例部分の計算」

R8-030 9.23

厚生年金の年金額の計算(給付乗率の引上げと300月保障)

 厚生年金保険の被保険者は、月々の給与(標準報酬月額)とボーナス(標準賞与額)に応じて、保険料を負担しています。

老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金の年金額は、「標準報酬月額と標準賞与額」と「被保険者期間(加入期間)」をベースに計算されます。

 

今回は厚生年金の計算式をみていきます。

※平成154月以降の加入期間についてみていきます。平成153月以前については月収ベースで計算しますので計算式が異なります。

 

老齢厚生年金の年金額の計算について条文を読んでみましょう。

法第43条第1

 老齢厚生年金の額は、被保険者であった全期間平均標準報酬額1,000分の   5.481に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて得た額とする。

※平均標準報酬額とは?

 被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額に、再評価率を乗じて得た額の総額を、当該被保険者期間の月数で除して得た額をいいます。

 

<老齢厚生年金の年金額の計算式>

平均標準報酬額×1000分の5.481×被保険者期間の月数

ポイント!

・「1000分の5.481」について

 昭和2141日以前に生まれた者は、生年月日に応じて10007.308から1000分の5.562に引上げます。

・「被保険者期間の月数」について

 実際の加入期間で計算します。上限・最低保障はありません。

・「再評価率」について

 過去の標準報酬月額や標準賞与額を現在の価値に再評価するための率です。

 

 

 障害厚生年金の年金額の計算について条文を読んでみましょう

法第50

① 障害厚生年金の額は、第43条第1項の規定の例(老齢厚生年金の計算式)により計算した額とする。この場合において、当該障害厚生年金の額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が300に満たないときは、これを300とする。

② 障害の程度が障害等級の1級に該当する者に支給する障害厚生年金の額は、①に定める額の100分の125に相当する額とする。

 

ポイント!

・「1000分の5.481」について

 老齢厚生年金のような生年月日による引上げはありません。

・「被保険者期間の月数」について

 被保険者期間が300月未満の場合は、「300月」で計算されます。

 

 

遺族厚生年金の年金額の計算について条文を読んでみましょう

法第60条第1

 遺族厚生年金の額は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める額とする。ただし、遺族厚生年金の受給権者が当該遺族厚生年金と同一の支給事由に基づく国民年金法による遺族基礎年金の支給を受けるときは、(1)に定める額とする。

1) (2)以外の遺族が遺族厚生年金の受給権を取得したとき

→ 死亡した被保険者又は被保険者であった者の被保険者期間を基礎として第43条第1項の規定の例(老齢厚生年金の年金額の計算)により計算した額の4分の3に相当する額。

 ただし、短期要件に該当することにより支給される遺族厚生年金については、その額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が300に満たないときは、これを300として計算した額とする。

2) 老齢厚生年金の受給権を有する配偶者が遺族厚生年金の受給権を取得したとき

→ 1)に定める額又は次のイ及びロに掲げる額を合算した額のうちいずれか多い額

イ (1)に定める額に3分の2を乗じて得た額

ロ 当該遺族厚生年金の受給権者の老齢厚生年金の額(加給年金額は除く。)2分の1を乗じて得た額

 

ポイント!

 短期要件と長期要件で計算式が変わります。

 

給付乗率(1000分の5.481

被保険者期間の月数

短期要件

生年月日による引上げなし(定率)

300月未満の場合は300月保障

長期要件

生年月日による引上げあり

実際の加入期間

 

過去問を解いてみましょう

①【H23年選択式】

 老齢厚生年金の額は、被保険者であった全期間の平均標準報酬額(被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額に、厚生年金保険法別表の各号に掲げる受給権者の区分に応じてそれぞれ当該各号に定める率(以下「< A >」という。)を乗じて得た額の総額を、当該被保険者期間の月数で除して得た額をいう。)1,000分の< B >に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて得た額とする。

 

 

 

 

【解答】

①【H23年選択式】

A> 再評価率

B> 5.481

 

 

 

②【R6年出題】

 老齢厚生年金の報酬比例部分の年金額を計算する際に、総報酬制導入以後の被保険者期間分については、平均標準報酬額×給付乗率×被保険者期間の月数で計算する。この給付乗率は原則として1000分の5.481であるが、昭和3641日以前に生まれた者については、異なる数値が用いられる。

 

 

 

 

 

【解答】

②【R6年出題】 ×

 生年月日に応じて給付乗率が引き上げられるのは昭和3641日以前ではなく、「昭和2141日以前」に生まれた者です。

 

 

➂【R1年出題】

 障害等級1級に該当する者に支給する障害厚生年金の額は、老齢厚生年金の額の計算の例により計算した額(当該障害厚生年金の額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が300に満たないときは、これを300とする。)の100分の125に相当する額とする。

 

 

 

 

【解答】

③【R1年出題】 〇

 障害等級1級の障害厚生年金の額は、「老齢厚生年金の額の計算の例により計算した額(平均標準報酬額×1,000分の5.481×被保険者期間の月数)×100分の125です。

※被保険者期間の月数が300未満の場合は300で計算します。

 

 

④【R7年出題】

 障害等級2級の障害厚生年金の額は、老齢厚生年金の報酬比例部分の算定式により計算した額となる。ただし、年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が300に満たないときは、これを300として計算する。また、生年月日に応じた給付乗率の引上げは行われない。

 

 

 

 

【解答】

④【R7年出題】 〇

 障害等級2級の障害厚生年金の額は、「平均標準報酬額×1,000分の5.481×被保険者期間の月数」で計算した額です。被保険者期間の月数が300未満のときは、300で計算し、生年月日に応じた給付乗率の引上げは行われません。

 

 

⑤【R2年出題】

 障害等級3級の障害厚生年金には、配偶者についての加給年金額は加算されないが、最低保障額として障害等級2級の障害基礎年金の年金額の3分の2に相当する額が保障されている。

 

 

 

 

【解答】

⑤【R2年出題】 ×

 障害等級3級の場合は障害基礎年金が支給されないため、3級の障害厚生年金には最低保障額が設けられています。最低保障額は、障害等級2級の障害基礎年金の年金額の3分の2ではなく「4分の3」に相当する額です。

(法第50条第3項)

 ちなみに、配偶者加給年金額は1級と2級の障害厚生年金には加算されますが、3級の障害厚生年金には加算されません。

 

 

 

⑥【R6年出題】

 死亡した者が短期要件に該当する場合は、遺族厚生年金の年金額を算定する際に、死亡した者の生年月日に応じた給付乗率の引上げが行われる。

 

 

 

 

 

⑥【R6年出題】 ×

 死亡した者が短期要件に該当する場合は、給付乗率の引上げは行われません。なお、被保険者期間が300月未満の場合は、300月で計算されます。

 

 

 

⑦【H27年出題】※改正による修正あり

 保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者が死亡したことにより支給される遺族厚生年金の額の計算における給付乗率については、死亡した者が昭和2141日以前に生まれた者であるときは、生年月日に応じた読み替えを行った乗率が適用される。

 

 

 

 

 

【解答】

⑦【H27年出題】 〇

 「保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者」の死亡により支給される遺族厚生年金は「長期要件」です。死亡した者が昭和2141日以前生まれの場合は、生年月日に応じ引上げられた乗率が適用されます。

 

 

⑧【R6年出題】

 現在55歳の自営業者の甲は、20歳から5年間会社に勤めていたので、厚生年金保険の被保険者期間が5年あり、この他の期間はすべて国民年金の第1号被保険者期間で保険料はすべて納付済となっている。もし、甲が現時点で死亡した場合、一定要件を満たす遺族に支給される遺族厚生年金の額は、厚生年金保険の被保険者期間を300月として計算した額となる。

 

 

 

 

 

【解答】

⑧【R6年出題】 ×

 問題文の甲は、「保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者」に該当し、遺族厚生年金は「長期要件」となります。(短期要件には該当しません。) 

 長期要件ですので、遺族厚生年金の額の計算については、実際の被保険者期間の5年(60月)で計算され、300月の最低保障はありません。

 

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→  https://youtu.be/Y8mG32C20E8?si=6VBpkT7XzRyswpsU

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