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R8-046 10.09
賃金の支払方法には次の5つの原則があります
・通貨払いの原則
・直接払いの原則
・全額払いの原則
・毎月1回以上払いの原則
・一定期日払いの原則
条文を読んでみましょう
法第24条(賃金の支払) ① 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。 ② 賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第89条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。 |
5つの原則とともに、例外にも注意しましょう。
今回は、「全額払の原則」についてみていきます。
賃金は「全額払」が原則です。
例外で、
・法令に別段の定めがある場合
→所得税の源泉徴収、社会保険料、雇用保険料の控除などが認められています。
・当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定(労使協定)がある場合
→購買代金、福利厚生施設の費用、社内預金、組合費などの控除が認められます。
過去問を解いてみましょう
①【R6年選択式】
最高裁判所は、賃金に当たる退職金債権放棄の効力が問題となった事件において、次のように判示した。
本件事実関係によれば、本件退職金の「支払については、同法〔労働基準法〕24条1項本文の定めるいわゆる全額払の原則が適用されるものと解するのが相当である。しかし、右全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もつて労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活をおびやかすことのないようにしてその保護をはかろうとするものというべきであるから、本件のように、労働者たる上告人が退職に際しみずから賃金に該当する本件退職金債権を放棄する旨の意思表示をした場合に、右全額払の原則が右意思表示の効力を否定する趣旨のものであるとまで解することはできない。もつとも、右全額払の原則の趣旨とするところなどに鑑みれば、右意思表示の効力を肯定するには、それが上告人の< A >ものであることが明確でなければならないものと解すべきである」。
(選択肢)
①権利濫用に該当しない
②自由な意思に基づく
➂退職金債権放棄同意書への署名押印により行われた
④退職に接着した時期においてされた
【解答】
<A> ②自由な意思に基づく
賃金にあたる退職金債権放棄の意思表示は、それが労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、「有効」であるとされました。
(最高裁第二小法廷判決シンガー・ソーイング・メシーン・カンパニー事件昭和48.1.19)
②【H27年出題】
退職金は労働者の老後の生活のための大切な資金であり、労働者が見返りなくこれを放棄することは通常考えられないことであるから、労働者が退職金債権を放棄する旨の意思表示は、これが労働者の自由な意思に基づくものであるか否かにかかわらず、労働基準法第24条第1項の賃金全額払の原則の趣旨に反し無効であるとするのが、最高裁判所の判例である。
【解答】
②【H27年出題】 ×
賃金にあたる退職金債権放棄の意思表示は、それが労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、「有効」であるとするのが最高裁判所の判例です。
(最高裁第二小法廷判決シンガー・ソーイング・メシーン・カンパニー事件昭和48.1.19)
➂【R3年出題】
労働基準法第24条第1項の禁止するところではないと解するのが相当と解される「許さるべき相殺は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、また、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額にわたらないとか、要は労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合でなければならない」とするのが最高裁判所の判例である。
【解答】
➂【R3年出題】 〇
「相殺は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、かつ、あらかじめ労働者に予告されるとかその額が多額にわたらない等労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのないものであるときは、労働基準法24条1項の規定に違反しない」とするのが最高裁判所の判例です。
(最高裁第一小法廷判決福島県教組事件昭和44.12.18)
④【H21年選択式】
賃金の過払が生じたときに、使用者がこれを精算ないし調整するため、後に支払われるべき賃金から過払分を控除することについて、「適正な賃金の額を支払うための手段たる相殺は、[…(略)…]その行使の時期、方法、金額等からみて労働者の < A >との関係上不当と認められないものであれば、同項[労働基準法第24条第1項]の禁止するところではないと解するのが相当である」とするのが、最高裁判所の判例である。
(選択肢)
①経済生活の安定 ②自由な意思 ③生活保障 ④同意に基づく相殺
【解答】
<A> ①経済生活の安定
(最高裁第一小法廷判決福島県教組事件昭和44.12.18)
⑤【R7年出題】
労働協約によりストライキ中の賃金を支払わないことを定めているX社では日給月給制を採用しており、毎月15日に当月の賃金を前払いする(例えば、8月15日に8月1日から同月末日までの賃金を支払う)ことになっているが、所定労働日である8月21日から25日まで5日間ストライキが行われた場合、当該ストライキに参加した労働者の賃金について、使用者が9月15日の賃金支払いにおいて前月のストライキの5日間分を控除して支払うことは、賃金全額払原則に違反する。
【解答】
⑤【R7年出題】 ×
前月分の過払賃金を翌月分で清算する程度は賃金それ自体の計算に関するものですので、法第24条違反とはなりません。
(昭23.9.14基発1357号)
⑥【H23年出題】
労働者が5分遅刻した場合に、30分遅刻したものとして賃金カットをするという処理は、労務の提供のなかった限度を超えるカット(25分についてのカット)について労働基準法第24条の賃金の全額払の原則に反し違法であるが、このような取扱いを就業規則に定める減給の制裁として同法第91条の制限内で行う場合には、同法第24条の賃金の全額払の原則に反しない。
【解答】
⑥【H23年出題】 〇
5分の遅刻について、30分遅刻したとして賃金カットをすることは、労務の提供のなかった限度を超えるカットとなり、全額払の原則に反し違法です。
ただし、このような取扱いを就業規則に定める減給の制裁として労基法第91条の制限内で行う場合には、賃金の全額払の原則に反しません。
(昭63.3.14基発150号)
⑦【H19年出題】
割増賃金の計算の便宜上、1日における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各時間数に1時間未満の端数がある場合は、1日ごとに、30分未満の端数を切り捨て、30分以上の端数を1時間に切り上げて計算する措置は、法違反として取り扱わないこととされている。
【解答】
⑦【H19年出題】 ×
「1日」単位で、問題文のような端数処理を行うことは、法違反となります。
割増賃金の計算の便宜上、「1か月」における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各時間数の合計に1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨て、30分以上の端数を1時間に切り上げて計算する措置は、法違反として取り扱わないこととされています。
(昭63.3.14基発150号)
⑧【H29年出題】
1か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額。)に100円未満の端数が生じた場合、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払う事務処理方法は、労働基準法第24条違反として取り扱わないこととされている。
【解答】
⑧【H29年出題】 〇
<端数処理について>
・1か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額。)に100円未満の端数が生じた場合
→50円未満切り捨て、それ以上を100円に切り上げる方法は、労働基準法第24条違反にはなりません。
(昭63.3.14基発150号)
⑨【H24年出題】
1か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には、控除後の額)に生じた千円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことは、労働基準法第24条違反としては取り扱わないこととされている。
【解答】
⑨【H24年出題】 〇
1か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には、控除後の額)に千円未満の端数が生じた場合
→ その額を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことは、労働基準法第24条違反にはなりません。
(昭63.3.14基発150号)
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