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R8-074 11.06
離婚した場合、婚姻期間中の厚生年金記録を当事者間で分割することができます。
今回は「合意分割」をみていきます。合意分割には、平成19年4月1日以降に離婚したこと、「按分割合」を定めることなどの条件があります。
なお、他に「3号分割」もありますが、今回は触れません。
条文を読んでみましょう。
法第78条の2 (離婚等をした場合における標準報酬の改定の特例) ① 第一号改定者又は第二号改定者は、離婚等をした場合であって、次の各号のいずれかに該当するときは、実施機関に対し、当該離婚等について対象期間に係る被保険者期間の標準報酬(第一号改定者及び第二号改定者(以下これらの者を「当事者」という。)の標準報酬をいう。)の改定又は決定を請求することができる。ただし、当該離婚等をしたときから2年を経過したときその他の厚生労働省令で定める場合に該当するときは、この限りでない。 (1) 当事者が標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合について合意しているとき。 (2) ②の規定により家庭裁判所が請求すべき按分割合を定めたとき。 ② ①の規定による標準報酬の改定又は決定の請求(以下「標準報酬改定請求」という。)について、当事者の合意のための協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者の一方の申立てにより、家庭裁判所は、当該対象期間における保険料納付に対する当事者の寄与の程度その他一切の事情を考慮して、請求すべき按分割合を定めることができる。 ➂ 標準報酬改定請求は、当事者が標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合について合意している旨が記載された公正証書の謄本の添付その他の厚生労働省令で定める方法によりしなければならない。 |
<用語について>
・ 第一号改定者
→ 被保険者又は被保険者であった者であって、標準報酬が改定されるものをいう。(標準報酬が多い方・渡す方)
・ 第二号改定者
→ 第一号改定者の配偶者であった者で、標準報酬が改定され、又は決定されるものをいう。(標準報酬が少ない又はゼロの方・受ける方)
・ 離婚等
→ 離婚(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者について、当該事情が解消した場合を除く。)、婚姻の取消しその他厚生労働省令で定める事由をいう。
・ 対象期間
→ 婚姻期間その他の厚生労働省令で定める期間をいう。
・ 按分割合
→ 改定又は決定後の当事者の対象期間標準報酬総額の合計額に対する第二号改定者の対象期間標準報酬総額の割合をいう
法第78条の3第1項 (請求すべき按分割合) 請求すべき按分割合は、当事者それぞれの対象期間標準報酬総額の合計額に対する第二号改定者の対象期間標準報酬総額の割合を超え2分の1以下の範囲(以下「按分割合の範囲」という。)内で定められなければならない。 |
<用語について>
・ 対象期間標準報酬総額
→ 対象期間に係る被保険者期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額に当事者を受給権者とみなして対象期間の末日において適用される再評価率を乗じて得た額の総額をいう。
按分割合とは、第2号改定者の分割後の持ち分の割合です。
第二号改定者の対象期間標準報酬総額 |
当事者それぞれの対象期間標準報酬総額の合計額 |
按分割合は、第二号改定者の対象期間標準報酬総額の割合を超え2分の1以下の範囲内で定めます。
※例えば、分割前の第二号改定者の持ち分の割合が30%の場合は、按分割合は30%を超え50%以下の範囲で定めることになります。
では、過去問をどうぞ!
①【R2年選択式】
厚生年金保険法第78条の2第1項の規定によると、第1号改定者又は第2号改定者は、離婚等をした場合であって、当事者が標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき< A >について合意しているときは、実施機関に対し、当該離婚等について対象期間に係る被保険者期間の標準報酬の改定又は決定を請求することができるとされている。ただし、当該離婚等をしたときから< B >を経過したときその他の厚生労働省令で定める場合に該当するときは、この限りでないとされている。
<選択肢>
① 1年 ② 2年 ③ 3年 ④ 6か月 ⑤ 按分割合 ⑥ 改定額
⑦ 改定請求額 ⑧ 改定割合

【解答】
<A> ⑤ 按分割合
<B> ② 2年
②【R7年出題】
甲と乙は離婚したが、合意分割の請求前に甲が死亡した。その後、乙は、甲の死亡した日から起算して15日目に、所定の事項が記載された公正証書を添えて合意分割の請求を行った。この場合、甲が死亡した日の前日に当該請求があったものとみなされる。

【解答】
②【R7年出題】 〇
当事者の一方が死亡した日から起算して1か月以内に所定の事項が記載された公正証書を添えて当事者の他方による標準報酬改定請求があったときは、当事者の一方が死亡した日の前日に標準報酬改定請求があったものとみなされます。
問題文は、甲の死亡した日から起算して15日目に合意分割の請求を行っていますので、甲が死亡した日の前日に当該請求があったものとみなされます。
(令第3条の12の7)
➂【R7年出題】
合意分割の按分割合について当事者の合意のための協議が調わないとき、又は協議をすることができないときには、当事者の申立てにより、家庭裁判所が請求すべき按分割合を定めることができるが、この申立ては当事者の一方のみによってすることができる。

【解答】
➂【R7年出題】 〇
合意分割の按分割合について当事者の合意のための協議が調わないとき、又は協議をすることができないときには、当事者の一方の申立てにより、家庭裁判所が請求すべき按分割合を定めることができます。
この申立ては当事者の一方のみによってすることができます。
(法第78条の2第3項)
④【H29年出題】
第1号改定者及び第2号改定者又はその一方は、実施機関に対して、厚生労働省令の定めるところにより、標準報酬改定請求を行うために必要な情報の提供を請求することができるが、その請求は、離婚等が成立した日の翌日から起算して3か月以内に行わなければならない。

【解答】
④【H29年出題】 ×
「3か月以内」ではなく「2年以内」に行わなければなりません。
条文を読んでみましょう。
第78条の4第1項 当事者又はその一方は、実施機関に対し、主務省令で定めるところにより、標準報酬改定請求を行うために必要な情報の提供を請求することができる。ただし、当該請求が標準報酬改定請求後に行われた場合又は第78条の2第1項ただし書(離婚等をしたときから2年を経過したとき)に該当する場合その他厚生労働省令で定める場合においては、この限りでない。 |
情報の提供の請求は、「当該請求が標準報酬改定請求後に行われた場合」又は「離婚等をしたときから2年を経過したとき」等は行うことができません。
⑤【R7年出題】
当事者又はその一方は、原則として、実施機関に対し、標準報酬改定請求を行うために必要な情報の提供を請求することができるが、標準報酬改定請求後にはこの請求を行うことができない。

【解答】
⑤【R7年出題】 〇
④の解答と同じです。
標準報酬改定請求を行うために必要な情報の提供の請求は、標準報酬改定請求後には行うことができません。
⑥【R7年出題】
対象期間標準報酬総額の算定において、対象期間の全部又は一部が平成15年4月1日前であるときは、同日前の対象期間に係る被保険者期間の各月の標準報酬月額に1.3を乗じて得た額並びに同日以後の対象期間に係る被保険者期間の各月の標準報酬月額(厚生年金保険法第26条第1項の規定により同項に規定する従前標準報酬月額が当該月の標準報酬月額とみなされた月にあっては、当該従前標準報酬月額)及び標準賞与額に、それぞれ当事者を受給権者とみなして対象期間の末日において適用される再評価率を乗じて得た額の総額が当該対象期間標準報酬総額とされる。

【解答】
⑥【R7年出題】 〇
月々の標準報酬月額だけでなく、標準賞与額からも同一の保険料率で保険料が徴収され、年金の額にも反映されるようになったのは平成15年4月以降です。(総報酬制といいます。)
平成15年3月以前は、年金の額に反映するのは「標準報酬月額」のみでした。
バランスをとるために、平成15年4月1日前の対象期間については、各月の標準報酬月額に「1.3」を乗じます。
また、過去の標準報酬を現在の価値に読み替えるために使われるのが「再評価率」です。
対象期間の末日において適用される再評価率を使います。
⑦【R7年出題】
老齢厚生年金の受給権者について、合意分割の標準報酬の改定又は決定が行われたときは、当該標準報酬の改定又は決定が行われた日の属する月の翌月から、年金の額が改定される。

【解答】
⑦【R7年出題】 ×
老齢厚生年金の受給権者について、合意分割の標準報酬の改定又は決定が行われたときは、「当該標準報酬の改定又は決定が行われた日の属する月の翌月」ではなく、「当該標準報酬改定請求のあった日の属する月の翌月」から、年金の額が改定されます。
(法第78条の10第1項)
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