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社会保険労務士合格研究室

労働保険徴収法「特例納付保険料」

R8-088 11.20

特例納付保険料の納付

 「労働保険料」には次の種類があります。

① 一般保険料

② 第1種特別加入保険料

➂ 第2種特別加入保険料

④ 第3種特別加入保険料

⑤ 印紙保険料

⑥ 特例納付保険料

 

今回は「特例納付保険料」をみていきます。

 

 

「特例納付保険料」は、雇用保険法の「特例対象者」に関する保険料です。

★「特例対象者」とは

 事業主が、ある人について、雇用保険の「被保険者資格取得」の届出を行わなかった場合、その人は、雇用保険に未加入となります。

 未加入のままだと、例えば、その人が離職した際に、基本手当が受給できなくなる可能性もあります。

 その後、資格取得の届出をし、被保険者であったことが確認された場合は、通常は2年前まで遡及して雇用保険に加入することができます。(保険料の徴収時効が2年であるため)

 2年を超えた期間については遡及することができませんので、基本手当の所定給付日数の算定などについて不利益が生じることがあり得ます。

 

 ただし、雇用保険料を控除されていたことが給与明細等の書類により確認された場合は、2年を超えて(雇用保険料の控除が確認された時点まで)遡及して加入することができます。(=特例対象者といいます)

 

<流れをイメージしましょう>

・事業主が被保険者資格取得の届出を行わなかったことにより、雇用保険に適用されていなかった者について

・被保険者資格の確認を行う日の2年前の日よりも前の時期に、賃金から雇用保険料を控除されていたことが確認された場合

・保険料の天引きがあったことが確認できる最も古い時期まで被保険者期間や所定給付日数を決定する算定基礎期間等に算入することができます。

(雇用保険法第14 条第2 項第2号、第 22条第5項)

 

★当該労働者を雇用していた事業主が、必要な保険関係成立の届出を行っていなかった場合

・事業主が保険料を納付していないにもかかわらず失業等給付が支給されることになる

・当該事業主は、保険料の徴収時効である2年経過後においても、保険料が納付できることになっています。(=特例納付保険料)

(徴収法第 26条)

(参照:行政手引25001

 

「特例納付保険料」について条文を読んでみましょう

徴収法第26条 (特例納付保険料の納付等)

① 特例対象者を雇用していた事業主が、雇用保険に係る保険関係が成立していたにもかかわらず、保険関係成立の届出をしていなかった場合には、当該事業主(以下「対象事業主」という。)は、特例納付保険料として、対象事業主が納付する義務を履行していない一般保険料(被保険者の負担すべき額に相当する額がその者に支払われた賃金から控除されていたことが明らかである時期のうち最も古い時期として厚生労働省令で定める日から当該特例対象者の離職の日までの期間に係るものであつて、その徴収する権利が時効によって消滅しているものに限る)の額(雇用保険率に応ずる部分の額に限る。)のうち当該特例対象者に係る額に相当する額として厚生労働省令で定めるところにより算定した額に厚生労働省令で定める額を加算した額を納付することができる

② 厚生労働大臣は、対象事業主に対して、特例納付保険料の納付を勧奨しなければならない。ただし、やむを得ない事情のため当該勧奨を行うことができない場合は、この限りでない。

➂ 対象事業主は、勧奨を受けた場合においては、特例納付保険料を納付する旨を、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に対し、書面により申し出ることができる

④ 政府は、申出を受けた場合には、特例納付保険料の額を決定し、厚生労働省令で定めるところにより、期限を指定して、これを対象事業主に通知するものとする。

⑤ 対象事業主は、申出を行った場合には、期限までに、厚生労働省令で定めるところにより、特例納付保険料を納付しなければならない

 

 

過去問を解いてみましょう

①【R7年出題】(雇用)

 特例納付保険料を納付することができる事業主は、2年以内の算定基礎期間を遡及して計算することが可能な特例対象者を雇用していた事業主である。

 

 

 

 

 

【解答】

①【R7年出題】(雇用) ×

 特例納付保険料を納付することができる事業主は、特例対象者を雇用していた事業主です。

 ただし、特例対象者は、「2年以内」ではなく、2年を超えて」(事業主から雇用保険料を控除されていたことが給与明細等の書類により確認された時点)遡及できる者です。

 

 

 

②【R7年出題】(雇用)

 特例納付保険料の納付手続については、労働保険徴収法第15条及び同法第19条に定める概算・確定保険料の納付手続に係る規定は適用されない。

 

 

 

 

 

【解答】

②【R7年出題】(雇用) 〇

 概算・確定保険料の納付手続に係る規定は、特例納付保険料の納付手続には、適用されません。

 

 

 

➂【R7年出題】(雇用) 

 特例納付保険料の納付の申出は、事業主の氏名又は名称及び住所又は所在地、労働保険番号並びに特例納付保険料の額を記載した書面を都道府県労働局長に提出することによって行わなければならない。

 

 

 

 

 

【解答】

➂【R7年出題】(雇用) 〇

 「対象事業主は、勧奨を受けた場合においては、特例納付保険料を納付する旨を、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に対し、書面により申し出ることができる。」とされています。

 特例納付保険料の納付の申出は、事業主の氏名又は名称及び住所又は所在地、労働保険番号並びに特例納付保険料の額を記載した書面を都道府県労働局長に提出することによって行わなければなりません。

(則第58条)

 

 

 

④【R7年出題】(雇用)

 特例納付保険料の対象事業主が労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託している場合、当該労働保険事務組合は特例納付保険料の納付等に係る事務を処理することができる。

 

 

 

 

 

【解答】

④【R7年出題】(雇用) 〇

 労働保険事務組合は特例納付保険料の納付等に係る事務を処理することができます。

(法第33条)

 

 

 

⑤【R3年出題】(雇用)

 特例納付保険料の納付額は、労働保険徴収法第26条第1項に規定する厚生労働省令で定めるところにより算定した特例納付保険料の基本額に、当該特例納付保険料の基本額に100分の10を乗じて得た同法第21条の追徴金の額を加算して求めるものとされている。

 

 

 

 

 

【解答】

⑤【R3年出題】(雇用) ×

 特例納付保険料の納付額は、特例納付保険料の基本額に、当該特例納付保険料の基本額に100分の10を乗じて得た額を加算したものです。

 法第21条の追徴金の額を加算して求めるものではありません。

(則第56条、第57条)

 

 

 

⑥【H27年出題】(雇用)

 厚生労働大臣による特例納付保険料の納付の勧奨を受けた事業主から当該保険料を納付する旨の申出があった場合には、都道府県労働局歳入徴収官が、通知を発する日から起算して30日を経過した日をその納期限とする納入告知書により、当該事業主に対し、決定された特例納付保険料の額を通知する。

 

 

 

 

 

【解答】

⑥【H27年出題】(雇用) 〇

 事業主から当該保険料を納付する旨の申出があった場合には、都道府県労働局歳入徴収官が、通知を発する日から起算して30を経過した日をその納期限とする納入告知書により、当該事業主に対し、通知します。

 納付書ではなく「納入告知書」による点もポイントです。

(則第38条第5項、則第59条)

 

 

 

⑦【R7年出題】(雇用)

 特例納付保険料の納付の申出を行った対象事業主が、特例納付保険料を納付する場合の納付先は、日本銀行又は都道府県労働局収入官吏とされている。

 

 

 

 

 

【解答】

⑦【R7年出題】(雇用) 〇

 特例納付保険料を納付する場合の納付先は、日本銀行又は都道府県労働局収入官吏です。

(則第38条第3項)

 

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