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R5-233
労働契約法の懲戒の規定を読んでみましょう。
第15条 (懲戒) 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。 |
「懲戒」についての考え方をみてみましょう。
★第15条の趣旨
「懲戒」は、使用者が、企業秩序を維持し、企業の円滑な運営を図るために行われるものです。
しかし、懲戒の権利濫用が争われた裁判例もあり、また、懲戒は労働者に労働契約上の不利益を生じさせるものです。
「権利濫用に該当する懲戒」による紛争を防止するために、「権利濫用に該当」するものとして無効となる懲戒の効力について規定しています。
★内容
① 使用者が労働者を懲戒することができる場合でも、その懲戒が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には権利濫用に該当するものとして無効となることを明らかにしています。
権利濫用であるか否かを判断するに当たっては、労働者の行為の性質及び態様その他の事情が考慮されます。
② 法第15条の「懲戒」とは、労働基準法第89条第9号の「制裁」と同義です。労働基準法第89条では、当該事業場に懲戒の定めがある場合には、その種類及び程度について就業規則に記載することが義務付けられています。
(参照:H24.8.10基発0810第2号)
では、過去問をどうぞ!
①【H24年出題】
使用者が労働者を懲戒することができる場合においても、当該懲戒が、その権利を濫用したものとして、無効とされることがある。
②【R1年出題】
労働契約法第15条の「懲戒」とは、労働基準法第89条第9号の「制裁」と同義であり、同条により、当該事業場に懲戒の定めがある場合には、その種類及び程度について就業規則に記載することが義務付けられている。
③【H26年出題】
「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する」とするのが、最高裁判所の判例である。
④【H30年出題】
「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことをもって足り、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていない場合でも、労働基準法に定める罰則の対象となるのは格別、就業規則が法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずることに変わりはない。」とするのが、最高裁判所の判例である。
【解答】
①【H24年出題】 〇
使用者が労働者を懲戒することができる場合でも、当該懲戒が、「当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされます。
②【R1年出題】 〇
労働契約法第15条の「懲戒」は、労働基準法第89条第9号の「制裁」と同じ意味です。
労働基準法では、制裁は、就業規則の相対的必要記載事項として位置づけられています。事業場に懲戒の「定めがある場合」は、その種類及び程度について就業規則に記載しなければなりません。
③【H26年出題】 〇
最高裁判所の判例のポイントは、次の2点です。
① 使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておかなければならない
② 就業規則が法的規範としての性質を有するものとして,拘束力を生ずるためには,その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることが必要。
(平成15年10月10日最高裁判所第二小法廷 フジ興産事件)
④【H30年出題】 ×
就業規則に懲戒の種別及び事由を定めておくだけでは足りません。
その内容を、事業場の労働者に周知させる手続が採られていることが必要です。
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