合格まで一緒に頑張りましょう!合言葉は「毎日コツコツ」

社会保険労務士合格研究室

令和5年度過去問で解ける問題 労働基準法

R6-111

R5.12.16 年次有給休暇の時季変更権

過去問で解ける問題をみていきましょう。

今日は労働基準法です。

 

条文を読んでみましょう。

39条第5

 使用者は、年次有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。

 ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 

  労働者には時季指定権があり、年次有給休暇を取得する時季は労働者が指定できます。

 また、使用者には時季変更権があり、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合は、時季変更権を行使できます。

 今日は、「時季変更権」についてみていきます。

 

では、過去問をどうぞ!

①【H29年選択】

 最高裁判所は、労働者が長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をした場合に対する、使用者の時季変更権の行使が問題となった事件において、次のように判示した。

「労働者が長期かつ連続の年次有給休暇を取得しようとする場合においては、それが長期のものであればあるほど、使用者において代替勤務者を確保することの困難さが増大するなど< A >に支障を来す蓋然性が高くなり、使用者の業務計画、他の労働者の休暇予定等との事前の調整を図る必要が生ずるのが通常である。[…(略)…]労働者が、右の調整を経ることなく、その有する年次有給休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をした場合には、これに対する使用者の時季変更権の行使については、[…(略)…]使用者にある程度の < B >の余地を認めざるを得ない。もとより、使用者の時季変更権の行使に関する右< B >は、労働者の年次有給休暇の権利を保障している労働基準法39条の趣旨に沿う、合理的なものでなければならないのであって、右< B >が、同条の趣旨に反し、使用者が労働者に休暇を取得させるための状況に応じた配慮を欠くなど不合理であると認められるときは、同条3項[現5項]ただし書所定の時季変更権行使の要件を欠くものとして、その行使を違法と判断すべきである。」

 

 

②【H22年選択】

 「労働者が長期かつ連続の年次有給休暇を取得しようとする場合においては、それが長期のものであればあるほど、[…(略)…]事業の正常な運営に支障を来す蓋然性が高くなり、使用者の業務計画、他の労働者の休暇予定等との< A >を図る必要が生ずるのが通常」であり、労働者が、これを経ることなく、「その有する年次有給休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をした場合には、これに対する使用者の時季変更権の行使については、[…(略)…]使用者にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ない。」とするのが最高裁判所の判例である。

 

 

 

 

 

【解答】

①【H29年選択】

A 事業の正常な運営

B 裁量的判断

ポイント!

・ 労働者が長期かつ連続の年次有給休暇を取得しようとする場合、それが長期のものであればあるほど、事業の正常な運営に支障を来す蓋然性が高くなる。

・ 労働者が、事前の調整を経ることなく、始期と終期を特定して長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をした場合には、使用者の時季変更権の行使については、使用者にある程度の裁量的判断の余地が認められる。

・ 裁量的判断が、労働基準法39条の趣旨に反し、使用者が労働者に休暇を取得させるための状況に応じた配慮を欠くなど不合理であると認められるときは、その行使は違法となる。

(平成4.6.23最高裁判所第三小法廷)

 

 

②【H22年選択】

A 事前の調整

ポイント!

・ 労働者が長期かつ連続の年次有給休暇を取得しようとする場合には、それが長期のものであればあるほど、事業の正常な運営に支障を来す蓋然性が高くなり、使用者の業務計画、他の労働者の休暇予定等との事前の調整を図る必要が生ずるのが通常である。

(平成4.6.23最高裁判所第三小法廷)

 

 

では、令和5年の問題をどうぞ!

R5年出題】

 労働基準法第39条第5項にいう「事業の正常な運営を妨げる場合」か否かの判断に当たり、勤務割による勤務体制がとられている事業場において、「使用者としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して代替勤務者を配置することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしないことにより代替勤務者が配置されないときは、必要配置人員を欠くものとして事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできないと解するのが相当である。」とするのが、最高裁判所の判例である。

 

 

 

 

 

 

【解答】

R5年出題】 〇 

 勤務割を変更して代替勤務者を配置することが可能な状況にあるにもかかわらず、休暇の利用目的のいかんによってそのための配慮をせずに時季変更権を行使することは、利用目的を考慮して年次休暇を与えないことに等しく、許されない、とされています。

(昭和62.7.10最高裁判所第二小法廷)

社労士受験のあれこれ