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2016よく読んでいただいた記事

H28.12.30 今年よく読んでいただいた「振替加算」

~年末特集~

 いつも「社会保険労務士合格研究室」をお読みいただきありがとうございます!

日本全国、色々なところからアクセスいただいています。

 検索でこのサイトに来ていただく方が大半です。なかでも、「振替加算」という検索ワードが目立ちます。

 ということで、今年最後の「社労士受験のあれこれ」は「振替加算」の記事で締めくくりたいと思います。

 来年もよろしくお願いいたします。

 

シリーズ振替加算 その1

シリーズ振替加算 その2

シリーズ振替加算 その3

シリーズ振替加算 その

シリーズ振替加算 その5

シリーズ振替加算 その1

【H28.4.25 振替加算が加算される人の生年月日】

年金を勉強するときは、「40年間サラリーマンだった夫」と「40年間専業主婦だった妻」をイメージしてみてください。年金制度はそのような夫婦をモデルにして設計されています。

さて、40年間厚生年金保険に加入していた夫には、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」が支給されます。生計維持関係のある妻がいる場合は「加給年金額」もプラスされます。

ところが、あるときに、加給年金額は加算されなくなります。なぜなら、妻が65歳になって老齢基礎年金を受けるようになると、加給年金額が妻の老齢基礎年金に振り替わるからです。

夫に支給されていた加給年金額が姿を変えて妻の老齢基礎年金に加算されることを「振替加算」といいます。(といっても加給年金額と振替加算の額はイコールではありませんので注意)

※ なお、「夫」と「妻」が逆になるパターンでもOKですが、ここでは、サラリーマンの夫と専業主婦の妻で話を進めていきます。

 

まず、一つ目のポイントは、振替加算が加算される妻の生年月日です。

老齢基礎年金に振替加算が加算されるのは、大正15年4月2日~昭和41年4月1日までの間に生まれた者です。

 

■■大正15年4月1日以前生まれの妻には振替加算は加算されない■■

大正15年4月1日以前生まれの者は、新法の老齢基礎年金ではなく、旧法の対象です。

旧法の考え方は、「専業主婦には年金は支給しない。その代わり夫の老齢年金に加給年金額を加算する」というものです。

加給年金額は通常は65歳未満の配偶者が対象ですが、大正15年4月1日以前生まれの配偶者のについては65歳以上でも加給年金額の対象になるのはそのためです。

ポイント 大正15年4月1日以前生まれの妻の場合は、65歳以降も夫の加給年金額の対象。老齢基礎年金も振替加算も対象外。

 

■■昭和41年4月2日以降生まれの妻には振替加算は支給されない■■

年金のモデルは「40年間専業主婦だった妻」です。

第3号被保険者制度ができたのは昭和61年4月1日の新法以降です。その前の旧法時代は、専業主婦は任意加入でした。

(第3号被保険者制度のお話はこちらから → 旧法と新法(第3号被保険者)

昭和41年4月2日以降生まれの妻は、20歳以降の期間がすべて新法です。20歳から60歳まで専業主婦なら、40年間第3号被保険者です。それで満額の老齢基礎年金が支給されます。振替加算でカバーする必要はありません。

一方、昭和41年4月1日以前生まれの妻は、昭和61年4月1日に20歳を過ぎているので、旧法時代を経験しています。専業主婦は旧法時代は任意加入でした。20歳から60歳までの間の旧法時代に任意加入しなかった場合は、その分老齢基礎年金がカットされます。振替加算はその部分をカバーするためのものです。

 

ポイント 昭和41年4月2日以降生まれの妻の場合は、40年間ずっと第3号被保険者の可能性あり。それで満額の老齢基礎年金が保障される。

 

シリーズ振替加算 その2

【H28.5.9 振替加算はいつから加算される?】

シリーズ振替加算その2です。

振替加算は老齢基礎年金に加算されるので、妻が65歳に達した日の属する月の翌月から行われます。(原則)

ただし、振替加算の開始時期は条件によって変わります。よく出るところを押さえましょう。

 

① H18年出題(夫よりも妻が年上の場合)

 老齢厚生年金の受給権者の配偶者が、当該老齢厚生年金の受給権が発生した当時、65歳を超えている場合は振替加算の対象とされない。

 

② H13年出題(老齢基礎年金を繰上げた場合)

 老齢基礎年金の繰上げ支給を受けた場合、振替加算も同時に繰り上げて支給される。

 

③ H21年出題(老齢基礎年金を繰り下げた場合)

 振替加算の受給対象者が老齢基礎年金の支給の繰下げの申出をしたときは、振替加算も繰下げ支給され、当該振替加算額に政令で定める増額率を乗じて得た額が加算される。

 

【解答】

① H18年出題(夫よりも妻が年上の場合) ×

 夫の老齢厚生年金の受給権が発生した当時に妻が65歳を超えている場合は、夫の老齢厚生年金が支給されるときから、妻の年金に振替加算が加算されます。(夫の老齢厚生年金に加給年金額が加算される代わりに妻の老齢基礎年金に振替加算が加算されるイメージ)

 

② H13年出題(老齢基礎年金を繰上げた場合) ×

 老齢基礎年金を繰上げたとしても、振替加算は65歳からです。

 

③ H21年出題(老齢基礎年金を繰り下げた場合) ×

 老齢基礎年金を繰り下げた場合は振替加算も繰下げ支給されますが、振替加算額は増額されません。

 

シリーズ振替加算 その3

【H28.5.16 生年月日で変わる振替加算の額】

振替加算は夫の老齢厚生年金に加算されていた加給年金額が、妻の老齢基礎年金に振り替わるというイメージですが、加給年金額イコール振替加算の額ではありません。

加給年金額は、224,700円×改定率ですが、振替加算は224,700円×改定率に生年月日に応じて定められた乗率(1.000~0.067)をかけて計算します。

 

ちなみに、生年月日に応じて定められた乗率が1.000になるのは、大正15年4月2日~昭和2年4月1日までに生まれた妻で0.067になるのは昭和36年4月2日~昭和40年4月1日までに生まれた妻です。

 

ポイントは、生年月日の若い妻(昭和41年生まれに近づく)ほど、乗率が小さくなることです。

 

シリーズ振替加算のその1でもお話ししたように、振替加算のモデルは20歳から60歳までずっとサラリーマンの妻(専業主婦)だった人です。

 

例えば、新法の対象者は大正15年4月2日生まれからですが、大正15年4月2日生まれに近い人ほど、旧法の期間が長い(その当時任意加入していなければカラ期間になる)ため、老齢基礎年金の額が小さくなります。そこをカバーするため、大正15年4月2日に近づくほど振替加算の乗率は乗率は1.000に近づきます。

 

では、昭和41年4月1日生まれの妻はどうでしょう?昭和41年4月1日生まれの人は昭和61年3月に20歳に達するので、旧法期間は1か月だけです。仮に任意加入しなかったとしても、昭和61年4月からは第3号被保険者ですので、満額に近い老齢基礎年金が支給されます。

とすると、振替加算は少なくてもいいですよね。ですので、乗率は0.067と小さくなります。

 

大正15年4月生まれに近づくほど旧法が長く(カラ期間が長い)、昭和41年4月1日に近づくほど旧法が短い(第3号被保険者期間が長い)ことをしっかり押さえてください。カラ期間が長い生年月日ほど、振替加算の額も高く設定されています

 

では、最後に問題を解いてみましょう。

H18年出題

振替加算の金額は、224,700円に改定率を乗じて得た額に、老齢厚生年金等の受給権者である配偶者の生年月日に応じて定められた率を乗じた額である。

 

 

【解答】 ×

乗率は、老齢厚生年金等の受給権者(夫)の生年月日ではなく、老齢基礎年金の受給権者(妻)の生年月日に応じて定められています。

 

 

シリーズ振替加算 その4

【H28.5.20 振替加算が行われなくなるとき】

シリーズ振替加算その4です。

これまで勉強してきたように、専業主婦の年金は旧法と新法で異なります。そもそも振替加算とは、旧法・任意加入→新法・第3号被保険者強制加入という制度の移り変わりで老齢基礎年金が満額にならない人をカバーするためのものです。

ですので、年金が十分に支給される人には、振替加算がつかない場合もあります。

 

~~ちなみに、旧法で任意加入して保険料を納付した+新法は全て第3号被保険者だった人の場合、老齢基礎年金が満額になりますが、その場合でも要件に合えば振替加算は加算されます。~~

 

 

★振替加算が行われないパターン → 妻も厚生年金保険に加入していたことがあり老齢厚生年金を受けることができるとき

ただし、これは厚生年金保険の被保険者期間が240月以上(中高齢の特例含む)で計算される老齢厚生年金が対象です。

逆に、老齢厚生年金を受けることができる妻でも、厚生年金保険の被保険者期間が原則として240月未満(20年未満)の場合は、振替加算が加算されます。

 

★振替加算が支給停止されるパターン → 妻が障害基礎年金、障害厚生年金等の給付を受けることができるとき

障害基礎年金等なら保険料納付済期間の月数に関わらず満額支給されますよね。振替加算でカバーする必要がないからです。

 

 

では、問題を解いてみましょう!!

① H20年出題(改)

 老齢基礎年金の受給権者が、厚生年金保険法による老齢厚生年金(その額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上であるものとする。)を受給できる場合は、振替加算は行われない。

 

② H21年出題

 振替加算が行われている老齢基礎年金の受給権者が障害基礎年金の受給権を有するときに、当該障害基礎年金の全額につき支給が停止されている場合においても、振替加算に相当する部分の支給は停止される。

 

③ H21年出題

 遺族基礎年金の支給を受けている者に老齢基礎年金の受給権が発生したときは、いずれかを選択することになるが、遺族基礎年金を選択した場合であっても、振替加算の加算要件を満たす場合には、当該遺族基礎年金の額に振替加算相当額が加算される。

 

 

【解答】

① H20年出題(改) ○

 「被保険者期間の月数が240以上」が最大のポイントです。

 

② H21年出題  ×

 障害基礎年金が全額支給停止されている場合は、振替加算は支給停止されません。

昭60法附則第16条では次のように規定されています。

「振替加算が加算された老齢基礎年金は、その受給権者が障害基礎年金、障害厚生年金、障害共済年金その他の障害を支給事由とする年金たる給付であって政令で定める額を受けることができるときはその間振替加算に相当する部分の支給を停止する」

障害を支給事由とする年金を「受けることができるとき」はその間振替加算に相当する部分が停止されますが、障害基礎年金が全額支給停止(受けることができない)の場合は、振替加算は支給停止されません。

◇◇ちなみに、平成21年には次のような問題も出ています。

振替加算が加算された老齢基礎年金を受給している者であって、その者が障害基礎年金等の障害を事由とする年金給付を受給できるとき(当該障害基礎年金は支給停止されていない。)は、その間当該加算に相当する額が支給停止される。

障害基礎年金等を受給できる(支給停止されていない)とあるので、その間、振替加算は支給停止されます。答えは○です。

 

③ H21年出題 ×

 振替加算は老齢基礎年金に加算されるものです。遺族基礎年金に振替加算額が加算されることはありません。

 

シリーズ振替加算 その5(最終回)

【H28.5.24 振替加算相当額の老齢基礎年金】

シリーズ振替加算その5です。

最終回は、「振替加算相当額の老齢基礎年金」です!

 

さて、老齢基礎年金の受給資格は、保険料納付済期間+保険料免除期間+合算対象期間が25年以上あることです。ただし、25年の計算には入るけど、老齢基礎年金の額の計算には入らない期間がありますよね。

学生納付特例期間、30歳未満の納付猶予期間、合算対象期間は、受給資格の有無の25年を見るときには入りますが、老齢基礎年金の額には反映しません。

例えば、合算対象期間と学生納付特例期間のみで25年を満たした人の場合は、老齢基礎年金の受給資格はあるけれど、老齢基礎年金の額としてはゼロになります。

そして、そのような人が、「振替加算」の要件に該当している場合は、「振替加算相当額のみの老齢基礎年金」が支給されるのです。

 

では、代表的な問題を2つ解いてみましょう。

① H20年出題

大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれた者であって、65歳に達した日において、合算対象期間といわゆる学生納付特例による被保険者期間を合計した期間が25年あり、かつそれ以外の被保険者期間はすべて保険料未納期間である者が、振替加算の要件に該当する場合は、振替加算相当額の老齢基礎年金が支給される。

 

② H17年出題

振替加算の支給対象者であって、保険料納付済期間が1年未満であり、合算対象期間と合わせて老齢基礎年金の受給権を取得した者には、振替加算の額のみの老齢基礎年金が支給される。

 

【解答】

① H20年出題  ○

合算対象期間といわゆる学生納付特例による被保険者期間を合計した期間が25年で、「それ以外の被保険者期間はすべて保険料未納期間」というのがポイント。この場合の老齢基礎年金はゼロになってしまいますが、振替加算の要件に該当している場合は振替加算と同額の老齢基礎年金が支給されます。

 

② H17年出題  × 

例えば、保険料納付済期間が1月でそれ以外はすべて合算対象期間で受給資格を満たした場合は、1月で計算した老齢基礎年金とそれに振替加算が加算されます。振替加算の額のみの老齢基礎年金ではありません。

 

 

社労士受験のあれこれ